(監督:りんたろう/脚本:大友克洋/総作画監督:名倉靖博)
バビロン崩壊。
やけに“引っ掛かり”の少ない映画であった。
けしてつまらない話ではなかったし、ビジュアル的にもけっこう面白かったと思う。思うのだが、ググッと観る者を惹きつけて離さない強い吸引力があまり感じられなかったのだ。淡泊。一言でいえばそういうことだ。ただなにがそう感じさせたのか、それをうまく言葉にまとめられないのがもどかしい。
ストーリーは実は単純で、煎じ詰めれば「王が絶対神を作ろうとして反逆にあった」という単純な図式に置き換えられる。そして展開自体も実はさほど複雑ではない。にも関わらず、観ていてすんなり頭に入ってこなかった。なぜだ。
たぶんそれは“ロボット”に気を取られすぎたからではなかろうか。話としてロボットが重要なファクター、『ロボットに魂はあるのか』『ロボットと人間は共存できるのか』という図式が一見あるようで、実のところ話の深い部分に関わってはいない。
それは話の中核にいるレッド公がロボットを排斥しようとしているのか、それとも受け入れようとしてるのかが曖昧なせいであろう。結局、単に便利な機械としか考えていないということなのだろうけれど(それはそれでありだが)、そのスタンスが見えてくるまでは、あるときは擁護派のような振る舞い、あるときは排斥派とつるむといった態度に観客(オレ)は戸惑うわけだ。
あのままでは少々散漫でストーリーをなぞっただけ(それでもかなりまとまってはいるが)の印象しか残らない。ティマとレッドとケンイチの3人に焦点を絞り込んで、感情の動きを感じさせてほしかった。ようするにそういうことなのだろう。