CHART-DATE : (2001/06)
作品

… ギフト

(監督:サム・ライミ)


お話

 力はチカラのためにあらず、ただあるためにある。


お話

 サム・ライミの作風もずいぶんと変わったものだ。おそらく映像の楽しさよりも人の内面を描くことに興味が移ったのだろう。へんなケレン味が減り、シンプルで落ち着いたものになった。それはともすれば地味で野暮ったい映像に陥りがちなのだが、これが実にギリギリの間合いで緊張感を保ち続け、観客を退屈にさせないテクニックを披露している。いやこれはテクニックというものではなくもって生まれた才能(ギフト)なのだろう。うまく円熟してきたものだ。

 田舎町に起こる殺人事件を軸に町の人々の心の奥底に眠っていた悪意や哀しみ、秘めた思いがつまびらかにされていく。事件が主役なのではない。そこに関わる人々が主役なのだ。そんなわけなので殺人事件といっても猟奇的なそれではなく実に控えめに描かれる。もちろん事件は事件なのでそれなりにショッキングな描写はあるが、それはあくまでも少々のスパイス程度である。
 主人公も超能力者という設定を与えられていても、それをことさらにアピールせず、それは「たまたまそうだっただけ」の、ひとつの個性というレベルでとらえているところに好感が持てる。主人公だからぞんざいに扱われることはないが、その力故に他者よりも達観した存在として描かれており、それはトリックスター的であるともいえる。だから超能力者であるが故の悩みがストーリーの推進力ではない(勿論、その能力を持つが故に起こる、人間関係の機敏もしっかりと描き、キャッチーな部分を無駄にしてはいない)。
 そんなトーンの作品であるからこそ惹きつけられるのだ。だから途中で「超能力は存在するのか否か」という法廷劇にシフトしていくと、ちょっと違和感がでてしまう。この路線で終わるのはちょっと違うんじゃないかと思ったのだが、そこはわかっているようで、人の心の話に戻っていく。
 そしてラストは人の悪意や苦しみ悩みだけではない、希望もあるのだという、(いい意味で)割と普通の着地点で幕を閉じる。それでいいのだ。この話は終わりかたで決まるのではなく、その過程こそが描きたかったことなのだから。


お話
  1.  占いに使うのがESPカードってのが新鮮。ま、占いっつっても、精神集中の手段だから問題はないわけだね。
  2.  田舎の深い森、キリの漂う沼地、神秘的な畏怖すべき自然をとらえていて見事。
  3.  ただ、破天荒映像職人としてのサムライミも好きなんで、いまの大人になりすぎた(?)作風は少し寂しいところもあるんですが。

お話
★★★★

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