(監督:チャン・イーモウ)
トタパタ、トタパタ、ステンッ
話はいたってシンプルるとある田舎の娘が初恋をし、そして結ばれるという、ただそれだけの話。紆余曲折というほどのドラマチックなストーリー展開や演出はなく、実に一直線で単純なものとなっている。
あえて、ストーリーの盛り上げをあげるならば、相手が街につれもどされて、それを追い、高熱を出して倒れるということはあるが、ドラマチックにしようとすればいくらでも展開していけるシチュエーションであっても追おうとせず、解決させてしまう。それは本当に「え、それでおわり?」というくらいに。
つまり、これはふたりのドラマチックな運命を描こうとしている映画ではないということなのだろう。そんな作り物めいた話を語るのではなく、どこにでもあるような出会いとその後の話をごく普通に映像にした、ということなのだ。なぜか? それは本当にいいたかったことは、ふたりのなれそめではなくどんないい人生だったかだからだ。それはラスト、モノトーンで描かれるやけに長いエピローグで示される。
父の、そして愛する夫のの葬式で、多くの人々が集まってくることで、いかに彼が人に愛されていたか、よい人生であったのかを描いている。それは「恋が実ったふたりはこんなに幸せに暮らしました」という姿を直接に描くよりも、より強く観る者に訴えかける。そしてまた、息子が教壇に立ち授業をすることで、彼の人生で伝えようとしていた想いがつながっていくのだ。
繰り返しになってしまうが、話としてのメインとしては幼い恋なのだろうが、描きたかったことは、そして心の琴線に触れるのもそのエピローグのほうが強い。なぜなら、これはふたりの恋物語ではなく、人の心のつながりの物語であるからだ。