CHART-DATE : (2001/07)
作品
カミカクシ
… 千と千尋の神隠し

(監督/脚本:宮崎駿)


お話

 お背中流しましょうか?


お話

 けしてつまらなかったというわけでないのだが、どうしても最後までノルことできなかった自分を確かに感じる。説教臭くない『ひと夏のジュブナイルファンタジー』としてよくまとまっているし、映像も丁寧で… と頭ではわかるのだが、なにかがひっかかってしかたがない。

 全体の雰囲気がアンバランスで、話は浮世離れした明るめの物語なのに演出は暗いのだ。もちろん八百万の神、魑魅魍魎の跳梁跋扈という話なのだから多少のオドロオドロしさは当然。しかし、BGMもダークで、必要以上に暗い雰囲気にする必要はないだろうに。主人公の戸惑いがそのまま画面に現れているのだろうか。
 なにより出だしがきつい。目の前で両親が豚になってしまう。子供にとってこれは、とてつもなく、トラウマにあってしまうくらいに怖いことじゃないか? これを無邪気に「豚になっちゃったね」と子供観客達は楽しめるのだろうか。そう思ってしまうのはオレが大人のせいか。

 アニメは第一に“絵”である。魅力ある絵が人を惹きつけるのであるとすれば、ジブリ絵にオレは魅力を感じなくなっているというのが理由のひとつである。観ていて“ハナ”がなにひとつなく、主人公のオーラが全然感じられないのだ。
 単に可愛くなく描くという意図でブスくれてるキャラというのは、それはそれでいいんだけれど、いや、オレの気分は「もうそういう土臭い絵はいいっす」ってことなのである。美形的位置づけのシロも、端正に描いているがどこか違和感があってなんかB級感がでてしまっている。
 キャラクター設定全般について考えてみても、八百万の神々もどうも新鮮味がなく、結局、もう新しいイマジネーションは無理なのだなぁと思う。唯一いいなと思ったのは雀と顔ナシだが、これはオリジナルじゃなくで日本やアジアの神そのままだからね。

 映画はストーリーであるとするならば、少女が自立する(あるいは成長する)話というテーマはいいとして、その展開があまりにも宮崎的、類型的である。「ああ、これはどこかでみた演技演出だなぁ」と思うところがあまりにも多すぎるのである。過去の自作の引用もあまりにもあからさまで、セルフパロディというよりも、媚びているようにしか思えない。
 また、ストーリー展開もなんか強引理不尽なところも多い。湯婆婆のところにいったと、いきなり「お婆ちゃん」よばわりのなつきよう。ようするにこんなんでいいのか? という安直さが全編を通して感じられるのである。

 全体に、新しい驚きや新鮮な面白さというものが全然感じられなかったのが、最大の原因。定番料理と思えばいいのかもしれないが、この味付けはもういい加減食い飽きてきてるってことなんだな、結局。もうあまり引き出しは残っていないよ、ということなのだろう。


お話
  1.  見どころがないわけではない。一番好きなシーンは川の神を救い出すシークエンスの全員の動き。百鬼夜行的なキャラのそれぞれの一挙手一投足が観ていて心地よい(主人公の動き除く)。はじめからこういうノリでやってくれればいいのにさぁ。でもってせっかくノッてきたのに、話は主人公に収斂していってしまい、こちらの気分もトーンダウン。
  2.  神々の湯屋というイメージはいいね。特に擬洋風のテーマパーク的おもしろヘルスセンターというのはよい着眼点だと思った。泊まってみたいちゅーかね。  でも、湯屋の洗い女ってのはいけれど、少女を働かせるのはいかがなもんか? やばいんじゃないの、児童法的に。てゆーか、それ以上に。
  3.  ラストでカーテンコール(特にセンとシロの)があるのかと思いきや、全然引っぱりもせずにあっさり幕。その引き際の良さは嫌いじゃないんだけれど、やはりちょっと期待するところがないわけではない。エンドロールのあとにそういうサービスがあると嬉しいでしょ。特にエンドロールが始まると同時にとっとと帰ってしまう親子連れのためにもね(性格わりーなオレも)。
  4.  あえていうなら、リン。でももっとセクシーでもいいのに。

お話
★★ ☆☆☆

ページトップにもどる