(監督:ティム・バートン)
(日光)猿の軍団
オリジナルがあまりにも有名すぎるとリメイクは非常に厳しい。しっかりとした目的意識(例えば、忠実に再現、大胆にアレンジ、徹底した換骨奪胎、等々)を頭に描いていないとたんに現在の映画技術で撮り直しただけというものになってしまう。特にオリジナル(ここでは映画『猿の惑星』を便宜上そう呼ばせていただく)の最も有名な「ここは地球だったのかぁ!」は、これがあっての猿の惑星というべきキモの部分であり、これをどう処理するのかが今回の一番の注目点であったことは確かだろう。
で、結果としては、あのような2段オチになるわけだが、あれを額面どおり受け止めるならば、2段目は不要だろ、と素直に思う。オリジナルと同じオチを豪華にしただけでインパクトに欠ける付け足しでしかない。話の流れからすれば、むしろ(読めてしまうが)ペリクリーズの登場で決着がついているし、それで十分なんじゃないかと思う。
話としてはそういうわけだが、しかし、このリメイク。本当は“話”を観せようとなどしていないのでなかろうか。ティム・バートンが本当にやりたかったことは、もっと別にあるように思う。
それは“猿”だ。変な理屈なしに。
「猿が人間を支配する逆転の面白味」などと監督のコメントはあるが、それもかなり言い訳に近く、人間なんかはどうでもよくて、とにかく「猿」。もっと有り体にいってしまえば「人間の真似をしているが所詮はケモノのエテ公」=「猿真似の面白さ」をやりたかったのだ。それが人間社会のカリカチュアになっているとか、それは観る側の勝手な深読みで、単純に人まねしてる猿が面白いからってのが、本当の製作理由のような気がしてならない。
なまじリアルに猿を表現しようとしたせいでそう感じるのかなのかもしれない。しかし、ティム・バートンの嗜好からすると「絶対、ヒトマネコザルがやりたかったんだろ?」とオレは思う。