(監督/制作/脚本:スティーブン・スピルバーグ)
世界の中心でAIを叫んだケモノ…(著者が違うでしょ!)
いかにもスピルバーグ的な映画ではある。結局、ピノキオモチーフそのまんまで「あぁデズ好きな人はこうなっちゃうのね」と思った次第である。“人間になりたかったロボットの数奇な運命”と一言でまとめてしまえば簡単だが、実際、それ以上特に語るべきものがあまりないのだ。
本当は、機械と人間の違いとはいったいどこにあるのか(生命の宿るものとはなにか)とか、差別と残虐性の問題(心に抱える不安からの逃避)とか、それなりに考えさせられるテーマも持ってはいるのだが、どうも甘いところが残り、流されてしまう気がした。おそらくそれは“健気な主人公”をあまりにも抒情的に描きすぎているせいかもしれない。もっとクールな視点で描いてもよかったのに。
実はこの映画はお子さま向けなのかもしれない。宣伝上は“泣き系の大人向け寓話”的扱いではあるが、話の展開や登場するキャラから感じるのは、ジュブナイルの香り、いやもっと低学年向きの“おはなし”である。もともとピノキオだし。そんなわけで、本来描き得るべき毒が画面からは感じられない。毒があったほうがいいというつもりはないが、なんか騙されてる。綺麗なところだけを切り出して、あとは隠して見せないよというあざとさが気にかかったのだった。
退屈はしない。話は(多少の思い入れ過多のきらいはあるが)テンポよく進むし、なにより眼福。確かにSFXは凄い。その手の見せ方は心得ている、ツボのつきかたを知っているなと思った。
という感じで割と冷静に最後まで観ちゃったわけだが、実はラストで不覚にも泣いてしまいました。
主人公ディビッドに対してではない。あんな自分勝手に死んでいったロボットなんかどうでもいいんだよ。熊のテディ。一人残されてしまった、そしてその哀しみを感じることのないテディの姿にオレは落涙するのだった。弱いんだよ、そういうシチュエーションに。テディがオレの今回の泣きツボなのだった。