(監督:ジョナサン・リン)
お命頂戴いたします。
コメディとしてよくまとまっている。破綻がない。しかしその分、コンパクトにまとまりすぎているきらいがなきにしもあらずといったところか。
この手の映画でのツボはなにかっちゅーと、トリッキーで二転三転するストーリーの転がり具合であるわけだが、その点、かなりうまくいっているように思う。罠や裏切りや悪巧み、どれもがキュートでシニカルでユーモラスにできている。
だが、もうひとつのツボであろうブラックなユーモア感覚については、ちょっと食い足りなさが残るのが残念ではあった。登場する人物が思いの外、皆常識人だったりするせいかもしれない。もっと破天荒であってもよかったのに。とりあえず、主人公の妻がその役を引き受けていることになるのだろうが、それにしてもあまり活躍せず、まわりをちょこちょことかき回す程度で終わっている。
この手の話の常として、主人公をドンドン深みにはめていくのは、“壊れた”キャラの存在なのだ。人の良い主人公が、そんなとんでもないメンツに翻弄されつつも、右往左往の果てに、最後には自分の手でハッピーエンドをつかむってのが、カタルシスにつながっていくと思うわけよ。そのためのハードルとして強烈なキャラは重要なんだよな。
とはいえ、そんなに「ああじゃなきゃいけない、こうじゃないとダメ」なんていうような作品じゃあないし、気楽に観て楽しむタイプの映画としてはかなりいけてるはず。
主人公を狙うビギナー暗殺者ジル役のアマンダ・ピートがキュートでナイス。オレのタイプであることはいうまでもない。