(監督:パク・チャヌク)
代償か偶然か。悲劇は訪れる。
面白い。だが、一言でそういってしまうには、あまりにも重く、そしてやるせなさすぎる。観終わって残るのは重い哀しみだけだ。だからといって観なければよかったとは思わない。重厚で圧倒的な力を持つドラマが語ることは多く、いろいろと考えさせられた。
構成が見事である。J、S、Aとタイトルの付けられた、それぞれにムードの異なる3章のエピソード。大掛かりなカットバック形式であり、視点が入れ替わることによって、各人の抱える過去や想いを浮彫りにする。しかもそれは安易な言葉ではなく、行動で、表情で語らせる。脚本が優れていたければできないし、またそれを活かす演出あってのことだ。 しかしそれは観終わってから気づいた点で、観ているときにはそんな技術的なことなどは思いもしなかった。忘れさせるほどのインパクトを持った話なのである。
誰にも悪意がないのにもかかわらず訪れてしまう悲劇。ちょっとしたボタンのかけ違え、ささやかな悪ノリがやがて大きな悲しみを産む。
いや、本当は悪意はあるのだ。それはイデオロギーという名前を持っている。岡目八目よろしく批評するのは容易いが、経験もなく当事者でもないオレにそれを語る資格はない。そしてそれは幸せなことなだろう、多分。
エピローグ、一枚の写真が語る無邪気でいられたあの頃の姿に涙せずにはいられない。いろいろと考えてしまう映画であった。