(監督/脚本:矢口史靖)
男がシンクロ? 男がシンクロ!
いろんな意味で面白い。いや、単純に面白い。
単なるバカ映画であるところがよいのだ。一見、今どきのさわやかスポ根映画のように見えるが、その実、かなりのバカ映画である。シチュエーションコメディの顔をしたスラップスティックとでもいおうか(ちょっと違うか?)。とにかくさわやかな青春コメディに感動しようとする観客の後ろでこっそり舌を出して笑う監督の悪意、邪気が感じられる。もちろん褒めているのだ。
フォーマットは完全なスポ魂コメディなのである。あこがれの女教師、なりゆきの入部、ダメ生徒の奮起、謎の特訓監督、淡い恋模様、一発逆転。ね、どこをとってもスポ魂的展開でしょう。しかし、それはあくまでも表面上はそういう話であるというだけで、実際は微妙にズレている。
責任感のまったくない(しかもどこかネジが緩んでる)女教師はあっさり退場。特訓監督は実は全然スゴくもなんともない単なる変人(しかも映画全体のムードを壊さんばかり)。動物も虐待するし(しかも見え見えのハリボテだし)… はたまた画面の端々で繰り広げられる無意味なお遊び(バカじゃん、火事ヨ、とかね)。とりあえず主人公達がひとつの目標に向けて彼らなりに行動しているのであまり気づかないが、本当はかなり無意味にして無軌道なハナシなのだ。
だから映画を見慣れている人ほど、逆に「こういう内容なら次はこう展開しないとヘンだろ」てなふうに感じてしまい、それが映画としての食い足りなさ、隔靴掻痒感となるみたい。しかし監督は、実はそういう感じにとられてしまうこと自体わかった上でやっている。
単なるバカであることに全力を注ぐ。これがテーマである。
だからストーリーがいささかご都合主義であっても気にしない大きなトラブルでクライマックスを盛り上げようというキャッチーな色気がない。もう雰囲気とノリだけ。それさえ押さえられればハッピー。それが狙いなのだ(ろう)。確信犯的悪意はここにある。
でも、なんだかんだいっても、クライマックスの爽快感は本物。まさにはじけるといった感じ。だから誰も文句のつけようがない。
いいじゃない。充分、充分だ。