(監督・脚本:トラン・アン・ユン)
微熱。身体の火照り。熱帯夜。
じっとりとした高湿度が伝わってくるかのような熱帯特有の艶めかしさが満ちている。それはしかし露骨なエロスではなく、濃厚でいて禁欲的なエロティシズムである。もっと簡単にいってしまうと、モロ出しをしていないということ。
話はそれこそ、3人の姉妹の不健全な愛の話であり、艶っぽくなるのは当然である。しかし、お国柄がそうさせているのもあるのだろうが、リアルにみせるのではなく、雰囲気で淫靡な感じを出している。それが余計にエロティックさを醸し出している。隠すことでより強調されるエロス。『濡れた身体にシーツを巻き付け、そこに浮き出る裸体のシルエット』のような感じ。でも『裸エプロン』ほどあからさまではない、そんなお洒落感があるのがよろしい。
それが成立するのも、映像の美しさがあってのことで、なにしろカメラワークが素晴らしい。全てのシーンが美しく、“絵”になっている。空間の切りとりかたがよいのだ。そして溢れる色彩。緑や赤、青、自然が溶け込むあざとくない原色の美しさ。この映像美を観るだけでもいいといえるかもしれない。(しかもオレツボの“美人三姉妹ネタ”だし(笑))
もっとも、話のほうはあまりオレとしてはピンとこなかった。三者三様の不道徳な(?)愛、(それも肉体の)を軸にした日常の断片で、なにも起こらず、なにも解決しない。結局、それでも日々は進んでいく。それだけである。その危うい日々を描くだけで、それを面白いと思えるかどうかが、はまる分かれ目といえよう。ちなみにオレはちょっとハマリそこねた。まあ、兄妹の近親愛にはかなりドキドキはしたが、でもそれだけだしね。あくまでも雰囲気映画の域を越えてはいないということだ。