CHART-DATE : (2001/11)
作品
シャワー
… こころの湯

(監督:チャン・ヤン)


お話

 親父サ〜ン、時間ですよ〜


お話

 一言で云えば下町の世話物。
 とある風呂屋の家族(親子、兄弟)の人間関係の修復を縦糸に、そして彼らをとりまく町の人々の様々なエピソードを横糸に織り込んでいく。普通の人たちがいがみ合い、許しあい、愛しあっていくことの素敵さ。人情のここちよさを、淡々と語りあげていく。

 話を進めていく上で、知的障害を持つ弟がキーとなっている。ではあるが、それをことさらに強調してはいない。実にいいバランスで描かれている。そいういう人もいるのだ、とまわりがごく自然に受け入れている(というのも違うな。その違いはただの個性程度にしか思っていないというような感じ)のが実に優しく感じられた。本来、それが当たり前なのだが、現実にはプラス的にしろマイナス的にしろ過剰に意識しがちで、自然体でいる難しさというのは否めない。もっともそれは、映画のテーマがそれを主眼としていないということもあるのだろうけれど。

 暖かい湯につかり、身体がほぐれていく。と同時に心もほぐれていく。
 その結末は様々な別れをともなってはいるのだが、けして湿っぽく辛気くさくはない。ベタベタしたお涙頂戴ではなく、さらっと気持ちよく乾燥したバスタオルで包まれたような暖かさである。観終わった後の余韻は、だから、風呂上がりのしっとり感にも似たここちよさだった。


お話
  1.  特にグッときたエピソードは、オペラ男。そしてコオロギ親父の別れのシーン。これ以外のもそうだけど、ひとつひとつのエピソードどれもが全編を通して伏線を積み上げているんだよな。だから泣けるんだよねぇ。
  2.  中国の風呂やってああいうのなの? 面白いシステムだ。
     古色豊かな健康ランド、ヘルスセンターみたいな印象で、日本におけるサウナみたいな位置づけなのだろうか。行ってみたいぞ、マジで。風呂好きとしては。
  3.  冒頭のコインシャワーは、あれはあれで惹かれるものが。ってもう日本では確か実現してるんだよな、コインシャワー!
  4.  湯舟に盆浮かべて酒、てのはいいねぇ。でもあの酒ってナニ? 観てるときは「あぁ、酒」って単純に思っちゃったけれど、中国で徳利にいれて出てくる透明なお酒って。まさか白酒じゃないっしょ? 風呂場で蒸留酒はないよね。
  5.  観ててアレと思ったのは長男の嫁の不存在。ケータイで話すシーンしか、しかもそのシーンにおいても台詞なし。とにかく一切出てこない。
     北京と広州がいくら遠いからといって、義父の葬式にも訪れないし、それ以前に葬式前に夫が連絡していないというのはヘン。かんどう状態だったということなのかもしれないが、中国ってそういう風土なのだろうか。いや、あるいは全部長男の妄想だったりして。

お話
★★★★

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