(監督:チャン・ヤン)
親父サ〜ン、時間ですよ〜
一言で云えば下町の世話物。
とある風呂屋の家族(親子、兄弟)の人間関係の修復を縦糸に、そして彼らをとりまく町の人々の様々なエピソードを横糸に織り込んでいく。普通の人たちがいがみ合い、許しあい、愛しあっていくことの素敵さ。人情のここちよさを、淡々と語りあげていく。
話を進めていく上で、知的障害を持つ弟がキーとなっている。ではあるが、それをことさらに強調してはいない。実にいいバランスで描かれている。そいういう人もいるのだ、とまわりがごく自然に受け入れている(というのも違うな。その違いはただの個性程度にしか思っていないというような感じ)のが実に優しく感じられた。本来、それが当たり前なのだが、現実にはプラス的にしろマイナス的にしろ過剰に意識しがちで、自然体でいる難しさというのは否めない。もっともそれは、映画のテーマがそれを主眼としていないということもあるのだろうけれど。
暖かい湯につかり、身体がほぐれていく。と同時に心もほぐれていく。
その結末は様々な別れをともなってはいるのだが、けして湿っぽく辛気くさくはない。ベタベタしたお涙頂戴ではなく、さらっと気持ちよく乾燥したバスタオルで包まれたような暖かさである。観終わった後の余韻は、だから、風呂上がりのしっとり感にも似たここちよさだった。