(監督:クリス・コロンバス)
ドリカム? いろんな意味で
映像表現(イマジネーション)がすごいのだ。ファンタジーのドキワク感が満ち満ちている。
例えばレンガ塀が開いていくシーン。最近の映画のパターンからすると、おそらくモーフィング処理になるのではなかろうか。しかしここではレンガ一つ一つが動いていく面白さを選んでいる。だからといってCGを避けているのではなく、学校のパーティで豪華な料理がでるシーンなどでは、モーフィングを使っている。しかし、これみよがしにドンと観せるのではなく俯瞰の構図にしている。つまり最新技術が前面に出てしまうことで、“魔法”らしさが薄れてしまわないようにしている。素直に驚きを演出しているのだ。そのケレンのなさ(というか、逆にそれが直球なケレンになっているのだけれど)が絵心を知っているのだなぁ、と思う。
ところで、観終わってから原作を読んだのだが、このイマジネーションが原作どおり、そのままを絵に置き換えていっただけであることに2度ビックリした。あのワクワクするイメージはすでに原作で約束されていたのだとは。
もっとも、それを知ってなお映像の凄さは圧倒的で、原作ではさらりと描かれる(そりゃ、文字による表現で事細かに書いてもしようがないから)魔法の世界のあれこれを、きっちりと、そして、魅惑的に具現化させる才に感動せずにはいられない。
さらに。SFX的が際だつのは、それを支える普通の(?)絵も見事だからだろう。それはギムナジウム(でいいんだよね?)という古色蒼然たる舞台だからこそ、どこを切り取っても“絵”になるというのはあるのかもしれないが、例えばハリーが雪の朝の校庭を一人歩くシーンの、静かな美しさに心を捕らわれずにはいられないだろう。
話自体は典型的な英雄譚であり、それに友情・努力・勝利(と成長)のキャッチーな展開とわかりやすいキャラ設定で、余程のことがなければつまらなくはならないだろう。もっともそれはそれらすべてがうまい塩梅のバランスがとれていてのことであることはいうまでもない。
ただ、荒らさがないわけじゃなく、冒頭のダーズリー一家の存在意義があまり見えないので、たんに嫌な過程環境でしかないという印象しか残らない。そのエクスキューズは原作のほうには(2巻以降に)それとなく言及されているが、この映画だけではそこまで描ききることは出来てはいない。それは今後、続編以降の課題ということだろう。
いずれにせよ、極上のファンタジー映画として完成しているといって過言ではない。