(監督・脚本:キム・ジウン)
チョークチョーク!
タイトルほどには反則ではない。そりゃ飛び道具や凶器攻撃もないわけではないが、大筋は意外と正攻法の王道。もちろんプロレスの話ではなくてストーリーのことだ。
うだつの上がらない男がストレス発散のため(ちゅーか上司のヘッドロックを交わす技を覚えるため!)に、うっかり入ってしまった場末のプロレスジムで、なんの因果かあれよあれよの間に覆面レスラーに仕立てあげられ(うわ、ストーリー説明しちまった)、という飛び道具的設定の物語。
なのにもかかわらず、話の決着点はプロレスラーとしての成功でも、男の成長でもなく、もちろん上司への復讐でもない。っじゃあなにかというと... いや、本当は成功であり成長であり復讐といってもいいような気もする。どれも正しくてどれも違うような気がする。ウェルメイドのようで、意外とシニカルな視点の演出がそう感じさせるのだろうか。スポ根的設定であるのにスポ根ではないということははっきりと云える。だからよくある熱いクライマックスや逆転劇のカタルシスとはあまり縁がない演出になっている。そしてこの映画ではそれが正しいように思えるのだ。
やはり主人公の(ちょっとだけだけど)成長がテーマといえるのだろう。告白できなかった憧れの女性に告白してフラレ、怖かった上司に立ち向かい、結局転けたとしても、そうすることができたという変化、その前向きな感じは心地好い。この一見、毒にも薬にもならない奇妙なコメディーのカタルシスはこんなことろにあるのだと思う。