CHART-DATE : (2002/01)
作品
悪漢探偵in巴里
… ヴィドック

(監督:ピトフ)


お話

 ゴアゴシックサイコサスペンスホラーディテクティブストーリー(?)


お話

 寡聞にしてヴィドックなる悪漢探偵の存在を知らなかったので、この映画のタイトルの意味もはじめは全然わからなかった。この種のミステリー系の話のタイトルは、本来は主役の名が冠せされるのが常套手段なのだろうけれど、往々にして犯人の名(あるいは犯人を特徴づけるキーワード)がつけられるのが今風である。で、あえて、探偵の名を持ってきたにもかかわらず、くだんの名探偵はその名前を印象づける間もなくあっさり冒頭で殺されてしまう。そして、主人公不在のまま、その探偵の捜査の跡をたどるかたちで話は進んでいく。「うーん、ユニーク」と思ったわけだ。そして「少々捻くれている」とも。
 で。もちろんストーリーが進む中で、名探偵の名がヴィドックということがオレの中で認知されてはいくわけだが、観終わって文献を見て、はじめてそれほどに有名な存在だとわかったわけで、う〜ん、もし知っていたなら、話の展開やクライマックスのどんでん返しも予測がついただろうになぁ・・・
 ということは、ある意味、話を堪能できたってことで、結果オーライともいえるか。

 ゴシックミステリーだ。超自然的存在が関わっているにもかかわらず、ホラーでもスリラーでもなく、あくまで純然たるミステリーであったのが新鮮だった。要するに設定から導き出される当然の帰結が理性的であるということだな。まわりくどい表現だけど。
 そんなスタンスの物語であるから、(少女の生き血で永らえる謎の仮面男という設定にはかなり惹かれるし、ナイスなんだけど)、その正体を錬金術師という超自然的存在(と、明確には言い切ってはいないが)としてしまうのは少々勿体ない。正しくは“錬金術師”としたのが不満なのではなく、錬金術師としたせいで“鏡仮面の謎”の論理的な解明をしきれていなかったことが残念なのだ。前半部での「鏡に写るものが皆死ぬ」という謎に対して、ある程度整合性のある解答を出しているだけに(名探偵モノとしての真骨頂だろう)残念である。

 とはいうものの、かなりオレツボな作品で、嫌いじゃないんですけれどね。


お話

 退廃と混乱の渦巻く世界観や作り物めいた質感の映像へのこだわり感など、オレ好みなのだが、いまひとつハマリきれなかったのは、実はその映像にあったりして。全編広角系レンズで撮影されているのか、周辺部の絵はかなり歪みがでている。で、カメラが移動すると、これが実に画面酔いしそうになるって寸法なのだ。効果として、あえてやっているということはわかるが、ちょっときつすぎたかも。


お話
★★★★

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