(監督:アリエル・ゼトゥン)
サーカス団がやってくる、ヤァヤァヤァ!
ヤマカシ集団を完全フィーチャーした、要するにアイドル映画なんだよね。だから(と云いきっちゃうと語弊があるのは承知の上だが)ストーリーにリアリズムなんか求めていない。登場人物達は大人の理屈、大人の倫理で行動していない。そういう話をめざしてはいない。むしろ子どもが空想するご都合主義的な“おはなし”に近い。ちゅーか、そのものだ。
それがダメというのではない。映画の方法論としては当然アリだ。ヤマカシというスタント野郎どもの妙技を堪能し、手に汗握ってワクワクドキドキすればいい。そういうことだ。
ただ、大人のオレ(?)としては、やっぱり『泥棒』という行為に(少なくともこの話の展開上においては)正当性を見いだせないし、その行為に対しての代償がどこかで払わなければならないだろう、と考えてしまう。
理屈ある犯罪物語なら、代償や逃げ道をきちんと設定するはずだが、これにはそれがない。だから、どうしてもウソっぽい。繰り返しになるが、おとぎ話ならそれでもいいのだが、残念ながら「おとぎ話」だと納得づくで観るには、現実を引きずりすぎている。で、つい冷めた観かたををしてしまい、損をしてしまった。
キャラの性格づけもそれぞれのエピソードも、それなりに設定されてはいるのだけれど、なんとなくな感じで、今ひとつパッとしないものどうか。まあ、キャラを省略するわけにはいかないから仕方のないところなのかもしれないが、対象を絞ることはできたのではないかとは思う。
ま、悪い映画じゃないんだけれど、いかんせん詰めが甘いといったところだろうか。