(監督:ドミニク・セナ)
正義を我が手に。
冒頭のトリッキーな台詞から、被害者の爆死シーンまで一気に魅せる。映像と演出の冴えに、「おっ」と引っかかり、一気に話に引き込まれる。釣り上げられる。
ここで話は、4日前に戻り、再び冒頭のシーンに、どのようにたどり着くかという遠大なカットバックを、スタイリッシュ&クール&ビューティに描き出してくれるわけだ。
世間的には、SFXを売りとしたいらしかったが、むしろ語り口の見事さをリスペクトしたい。とにかく脚本がうまいのだ。緊張感を緩めることなく、“犯人の正体はなにか”、“なにをしようとしているのか”などの、いくつもの謎を、絡め、解きほぐし、再び結びこみ、と、観る側の頭を休ませないように、ぐいぐいとストーリーを展開していく。
ケレンに満ちた硬質な(それでいて艶めかしい)演出と相まって、退屈させない。
実は、ストーリー的にもビジュアル的にも、さほど目新しいアイディアは用いられてはいない。だが、それをそう感じさせない力を持っているというわけだ。凄いね。
ラストの大どんでん返しは「うーん、やはりそうきたかぁ」という感じで、中盤、主人公が犯人の死体を発見した時点で、その伏線がどうつながるか、論理的につなげるにはどういう展開が妥当かと、ちらちら考えながら観ていたので、あっと驚くような、というようなわけにはいかなかったが、もっとも妥当な(観客が納得できる、しかし予定調和といい捨てられない程度のトリッキーさを持って)終わりかたで、なるほどね、と思った。
いろいろな意味で満足した。