(監督:中田秀夫)
生水が飲めなくなった人、多し。
一見、よくできた映画のようにみえる。怖がらせるところで怖がらせ、泣かせるところで泣かせる。上手くできてるな、とは思うのだ。一見ね。
ところが、よくよく考えると、それは監督のこなれた演出のおかげで話がするすると進むからそう思えるだけであって、実際はかなり荒らい話であることに気づく。怖い話に持ち込むための強引な設定や展開がそこそこにあり、そのせいで、悪い意味で、話が微妙にリアリティをなくしていっている。
例えばストーリー的な点からいえば、管理人があそこまでなにもしない、問題がある賃貸マンションはありえない。主人公の不安や焦燥を高めるための方法論だろうとは思うのだが、ちょっと無理矢理過ぎる。
仮にその問題をよしとしても、展開が変だ。もし、あのような状況になったら、普通はまず上階に人が住んでいるかどうかを確認するところからやると思うのだ。それにあの展開ではどう考えても謎の答えはアレ以外にはありえず、それは誰が考えても見え見えなのだから、警察、少なくとも警備や整備関係を呼ばないのは変すぎ。しかし、それをやってしまうと、この話のもっとも重要なネタがあっさりばれてしまうので、それはできない。であるが故に、登場人物達は、意図的におバカな行動をとらされる。まあ、クレバーに行動されると、いとも簡単にストーリーが破綻してしまうのでしかたがないのだが。
ともあれ、それに気づいてしまうと、もうダメで一気に冷めてしまった。
マンションにひとけがなさすぎで、夜になっても人が住んでいるという気配がまったくないのも、恐怖感、あるいは違和感を出そうということからなのだろうけれど、ねぇ。これら以外にも、怖い話にしようとするあまり、にうやむやのうちに無茶処理されているところがかなりあって、いったん冷めてしまうと、怖さよりも嘘くささが先に立ってしまい、残る気分は、あざとさばかりなり、であった。
恐怖シーンは、監督お得意のおどかしの理論にのっとているため、確かに怖いのは怖い。が、もういい加減、読めてしまうってのは否めない。と思ってしまうのも、冷めて取り残されてしまったせいかしら。
まあ、割り切ってしまえばそこそこ楽しめるとは思うのだ。現に後ろの席に座った女の子たちはかなり怖がって楽しんでいたので、オレがすれっからしなみかたをしてしまったのがいけなかったんだろうな、とは思うんですけれどね。