(監督:ピート・ドクター)
ンガウォーッ!
もはや安心して観ることが出来るピクサー作品。という認識がオレの中には厳然として存在する。にもかかわらず、実のところ観る前に不安がないわけではなかったのだ。
そのわけは「主人公がモンスターである」ということ。モンスターだからいけないのでは、もちろん、ない。モンスターのデザインがいかにも子供だまし的なケバケバしさが前面にでておりキャッチーなキャラで一儲け的な印象を受けたせい、というのも理由のひとつだが、もっと本質的(?)な部分での違和感があったせいなのだ。
それは、新しくモンスターを作ってみましたというところが、いかにもあざとさに感じられたせい。リアリティを考える上で、モンスターという存在を文化的にどうとらえているかということが、実は重要だったりして、そこらへんが曖昧なのが、引っかかったのである。ここでいう“モンスター”という存在は、日本における妖怪とか物の怪とかにかなり近しい存在だとは思うけど、個別のキャラとして立っている“それら”とは微妙に違うように思うわけだ。強引にフィッティングしてしまえば西洋の創作妖怪ということなのだが、なんだろう、妖怪(モンスターでもいいけど)が生まれるためには、例えば、「黒い影がついてきた」とか「青白い光が見えた」とか、なんらかのインパクトがあってのものでしょう。そういうものがないままに、頭の中で面白かろうと考えられたモンスターは、所詮はキャラ商品のためのつくりもの的でしかない。今回のモンスターは特にそう感じさせるようなキャッチーなデザインだったわけですよ(まわりくどい説明ですまん)。
と、そんな懸念もなんのその。見始めてしまえばそんなことはどうでもよくなるのであった。それはやはり、語り口のあまりの巧さ故。ピクサー恐るべし。モンスター世界の設定は、こちらの世界の裏返しで、少々作為的な部分が目立ってしまい、あざとさを感じるところがないわけでもないが、ふたつの世界の関係が、恐怖エネルギーの入手源という設定は上手いというか、いい意味で呆れたバカ設定でナイス。
そしてなによりも、子供の扱いかたの妙。いかにもっちゃ、そのとうりなんだけど、やっぱ犬猫子供には敵わないのである。いろんな意味で。
ビジュアルも相変わらず素晴らしくって、今回特に凄いと思ったのはクライマックスの扉倉庫のチェイス。ばーんと広がったパースペクティブに総毛立ち。そしてジェットコースティックな疾走感、ドアからドアへの追っ駆けっこの遊園地/迷路的な楽しさ。ハラハラドキドキワックワクとはまさにこのことなのだ。
しかも、もちろん泣きましたよ、今回も! 観た誰に聞いても泣いたっていってたからね。んでもって、ラスト、ドアが修理され、そして・・・ といったところで、最後まで引っ張らずさっと終わらせる引き際の巧さ。わかってる感に拍手喝采だ。