(監督:ジョエル・コーエン)
歌うは、ズブ濡れボーイズの、皆さん、でーっす!
寓話である。
リアルなようでどこかとぼけたファンタジックな、あるいは浮世離れした不思議な雰囲気の話なのである。それはアメリカ南部の持つ、なんとなくなマジカルな印象のせいなのかもしれない。ほら、カントリーミュージック自体、どことなくそんなイメージがあるでしょう。ファンタジー、というよりも、マジックリアリズムを許容する風土というような泥臭さっての? 違う? オレの思いこみか? まあ、いいや。
そもそも道で拾ったギター弾きとか、歌っていくらの放送局とか、躁鬱病の伝説の銀行強盗とか、変な設定だらけ。冒頭の盲目の人力軌道車の老人もそうだし、カエルだってそうだ。彼らの旅路はマジカルなシンボルに満ちあふれている。そしてそれを動かしているのは、実は人の心であり、だからそこ偶然に偶然が重なって奇跡が生まれてくる。
でも、映画として面白かったのかどうかとそうでもないのだった。なんかのりが合わないんだよね。コーエン兄弟とは相性悪いのかなぁ。でも、なんとなく憎めない感じ全編に漂っており、だから、なんかダメ出しをしてはいけないような気持ちにさせるのだった。