(監督:井坂 聡)
おまえはトラや、トラになるんやぁー!
結局、なにがやりたかったの? なにを撮りたかったの? その根本的な立地点がしっかりしてないせいで、作品も中途半端な仕上がりになってしまったのではなかろうか。
『謎の覆面リリーフ投手が大活躍』というコンセプトをみる限りでは、バカテイストでやや荒唐無稽なれど、手に汗握るスポ根的展開もあり、最後には手に汗握るカタルシスが待っている。と、そういうストーリーを連想するのが普通じゃないでしょうか。
ところが実際には、主人公はなんかヘンに屈託してるし、阪神監督はセコセコで知将にも策士にもみえないし、なんだかんだいって、話がどうにも煮え切らないこと夥しい。要するに突拍子もないバカアイディア(褒め言葉)をそのまま貫きとおす信念がなく、リアルな感じを入れておこうか的な、逃げをつくって逆に大失敗した、というところだろう。
しかもそのリアルがなんのことはない「中年になりかけの主人公の自分探し/夢探し」という、なんか青臭いというか泥臭いというか、なんかセコイんだよね。なんだろう、うまく転がすことができればそれもまた感動的なビルドゥングスストーリー足り得たと思うのだが。
結局、脚本が甘いというのにつきる。いや、演出も冴えなかったんだけどさ。せっかくの好企画(あるいは超バカ企画)だったのになぁ。実はすごく期待していただけに揺り返しも大きかったのであった。
長島一茂は頑張っていると思うよ。無骨なれど、雰囲気は出ていたと思うのだ。でも、それはそれとして、駒田だよ。いいねぇ、ヒール役なのに(だから?)、すんごく印象的でカッコイイ。あんないい味が出せるとは、侮り難し。だな!