(監督:ピーター・ジャクソン)
影横たわるモルドールの国に。
圧巻である。
直球勝負である。
へんにひねらずケレンに走らず。かといって単なる「小説→映画」の変換作業ではなく、映像としての見どころもわきまている。
戦いのシーンも個としての戦いから、軍隊としての戦いまで千変万化。映像テクニックに走らず、ストレートな映像化が逆に力強さとなっている。
なによりすごいのは、「指輪」の世界をそのまま映像化できていること。例えば、ホビット庄、あるいは荒野、裂け谷。はたまたホビットからエルフに至るまで、オレが頭に描く指輪の世界とはまさにこれであり、その脳内世界を具現化し、映像に定着させる力にも脱帽する。それにしても、これだけビッグネームな原作である指輪の世界のイメージは人によって千差万別、それぞれ違うと思うのだが、にもかかわらずおそらく誰もが納得できる映像にできているというのは凄いと思う。まあ、ファンタジー系RPGの隆盛という下地があってのことかもしれないし、あるいは、そもそも映像的な文章を描き得たトールキンの偉大さなのかもしれないけれど。
あれだけ長い物語をまとめるにあたり、時間の関係もあるし、さすがにダイジェスト的になるんだろうなぁ、それはしかたのないことだろうなぁ、と思っていたのだが、あにはからんや。思いきや、意外にもしっかりとストーリーをきっちりなぞっていて、凄いなと思った。まあ多少の省略はあったが、多少駆け足かなぁという程度で、むしろジェットコースタームービー的スピード感がでてきていてむしろ映画としてはよかったのではないか。実際これだけ丁寧に話としてまとまりをつけていることは賞賛ミコナゾールであるといえる。告白すると、実際、見ていて、逆にいったいいつ終わるんだよ的気分になったりもしたのだ。話を知っているだけに、「まだこの場面かよ、いったい3時間でまとまるのかぁ?」
と思ってしまったのだ。もっとも、冗長だったのではなく、3時間にぎっちり詰め込まれていたろいうことなのだが。
基本的に群像劇であるこの物語のどこに映像的見どころを設定するかという点で、今の時代的にはクリーチャーやモンスターをVFXで見せ場にするというのが常道だと思うし、それはそうだったのだが、それ以上に、戦いを描くそのこと自体に主眼がおかれているのが、凄いと思った。本来個々の戦いが主眼の話ではないのだが、個々の戦いをしっかりと描くことで英雄の存在を示しひいては英雄譚としてより明確にする(少なくとも映画的には)ことができる。
と小理屈をこねてみたが、ようするに力強いカッチョよさ感にグッときたってことなんですけれどね。
とりあえず、第1章としては大いなるイントロでしかないわけです。3編通してはじめて壮大な世界を味わえるのは承知の上で、あえて、傑作として云いきりたい(次でコケないことを祈る)
しかし、感想として話がどうという以前に、あれだけの身長差があるそれぞれの種族を違和感なく描ききっているってことのほうが実は凄いことだよ。そんな基本のアラが見えちゃうと話どころではないからね。