(監督/脚本:森田 芳光)
すっきっなひとーと、わっかりあえーた、ピース!
世間一般の評判で云われているほどつまらなくはなかった。確かに話は判りにくくはあるが、ちょっと頭を使えば補える程度で、それをもって全然判らんと評するのは自分の頭を使うことは忘れていることを暴露しているようでみっともないと思う。
とはいうものの、そういう省略表現を行なうことが、映画としてうまくいっているかどうかはまた別の話だ。
ようは、ダイジェストっぽい感じは否めないってこと。(そうでもないのかな?)
例によって、原作をあえて読まずにいったので、実際のところはどうかわからないのだが、宮部みゆきのいつもの語り口からすれば、「このシーンはもっと書き込まれているだろうな」と想像できる。それが実際にそうなのかは別としてだが、逆の見かたをすれば、映画的には必要な情報を省略していていると観てとったということなのだ。観る側で補えるということは、演出上の方法としてやっているのだろう。それは映画に速度感を与えようとしているためなのかもしれない。また現実的な理由として膨大な原作をまとめる上での選択でもあっただろう。
しかしその結果として、映画としては、つまらなくはなかったが駆け足過ぎて、誰に感情移入する間もなく単にストーリーを追うだけになってしまい、故に現代社会に起きた歪んだ事件のひとつ程度の印象だけが残ることになる。
特に、事件のエクスキューズとして大事だと思える女たちが死に逝く理由や、ピースのとった結末の意味は、推測するしかないわけで、観終わってあまりカタルシスに欠けるのだ。(まあ、そこいらへんは原作を読めばいいってことなんだけどさぁ)