(監督:森田 宏幸)
いいかもぉ〜
なんともキュートな話であることか。のほほんとした、いい意味でぬるま湯のような心地よさ。あ、陽だまりの心地よさっていえばいいのか。つまりそういう気分に満たされているということである。
例えばアニメ的スペクタクル(登る、落ちる、飛ぶ、などだ)、ハラハラドキドキなシーンは随所にあるのだけれど、しかし、緊迫感切迫感はないんだよね。それは作品全編に満ち溢れている微笑ましさのせい。なんたって「猫」だからね。そりゃ微笑ましくなるのは道理でしょう。まあ猫の浅知恵? バカ計画? 精一杯なにかをしようとしているのを、親心のような気持ちで観てる。そんな印象だね。
そんな雰囲気づくりは、実は意図的に仕掛けられているわけで、例えば、エンディングにつじあやのを起用するところもそうだし、なにしろ主人公ハルの口癖が「いいかも〜」でしょ。この心地よい脱力感。まさにいいかも〜、である。
なによりキャラの絵づらが、スタイリッシュなのがよろしい。線がぶれていないというか、スーッと通っているというか、ジブリ絵(というより宮崎絵だね)のあの泥臭さがまったくないのが、実になんというか好印象である。おそらくこのようなノーテンキな話をジブリ絵でやってしまった場合、下町的田舎的人情話風になってしまうだろうと思うのだ。それをある種クールなキャラをあてたおかげで、軽さが際立った。そういうことなのではないだろうか。製作サイドコメントでも、確か「若い才能で云々」みたいのがあったように記憶しているが、ようは、そういうことなんだろう。おかげで最近失望してきていたジブリに対して、まだまだやれるじゃん。と思うことができたのであった。