(監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ)
サラリマン。といえばサイバーでパンクなんだけど。
いやぁ、思っていたのと全然違う話だったのに、まずはビックリ。
もっとパラノイアな感じの、少なくとも内宇宙系迷宮の作品を想像していたのだが、その実は、なんのことはない、スパイミステリーであった。実は最後の最後まで、全ての話はある男の崩壊した心が見る妄想/幻覚であった、と、いうそういう結末を迎えるタイプの話なのかと思っていたのだ。とりあえず、訳もわからぬまま、二転三転する男の運命に引っぱりまわされてはいくが、それが内面化していき、やがて... みたいなね。ところが、そういったこともなく、結局ああいったオチになるとは。振りまかれる謎は多いが、それは人間の内面ではなく、あくまでも外側に設定されている。ま、表面上では謎に満ちており幻惑感を誘発してはいるが、煎じ詰めれば、ようするに普通のエンタイテイメント系の話ってこと。
ある意味予想していなかっただけに驚いたことは驚いたが、なんか肩すかしをくらった感じ。
しかしそれすらもフェイクで、本当は主人公の妄想だったということが真実で。作品上では最後の最後までそれは明示しなかっただけなのだだろうか。でも、そうだったら、全ては作品内で完結させるという映画の最低限のお約束すら、ないことになってしまうのだよね。
あまりにもスパイものではなく、パラノ妄想系な演出のせいで、どうしてもそう深読みしてしまわざるを得ないといったところ。でも、そういった変化球を取っ払っちゃうと、単にバジェットの低いハリウッド的なB級スパイものとなってしまい、それを回避するためには、そして監督もそういう作品を造るつもりはなかったのだろうし。で、こういうことになるのは必然だったのかもしれないな。