(監督:ブレット・ラトナー)
背なの龍が啼いているぜ。
思ったよりも楽しむことができた、といっちゃうと全然期待していなかったようだが、そのとおり。正直、期待していなかっただけに、面白かった。だって、レクター博士シリーズももういい加減、いいやって感じになってたもんでね。同じようなテイストの話を何度も繰り返していくと、どうしても劣化/陳腐化しちゃうでしょ。しかも今回は半ば強引なまでのリメイクなわけで、ちょっとひいていたのでした。
ところが、蓋を開けてみれば、そんなに悪い出来ではなかったというわけで。全編を包み込む、まとわりつくような重々しい、それでいて乾いたトーンも、見事にはまっており、サイコサスペンスとしてかなり完成度は高いはずだ。でも、だからといってサイコーですとは、やはり言い難い。
じゃあ、それはなんでかって思うに。結局、前2作があってこそなんだなぁ、と思う部分が非常に多く感じられたってことなんだな。本当は、映画は他作との比較で観るべきじゃないとは思っているのだが、とりあえずこれは3部作だし、まあ、そういう観かたをさせてもらうが。要するに『羊・・』と『ハンニバル』をしっかりと研究して、いいとこ取りしたんだろうなぁ、と思う要素が実に多いのである。
まあ、ストーリー、というか3部乍としての整合性やトーンの連続性を考えたせい、というみかたもあるのだろうが、それよりも失敗が許されない状況の中、美味しいとこ取りでキャッチーに仕上げ極力リスクを少なくしたんだろうなと思うのである。だからダメというわけではない。面白い作品になっていればそれはアリだし、今回については充分に成功していると思う。ストーリー面での面白さははじめから概ね保証されているわけであり、料理の段階で、ヘンに奇をてらわず、正攻法でしっかりと作り上げたのは正解だろう。後半、レッドドラゴンの視点で話が展開していく部分で、レクターシリーズとしての成立させるための無理が、少々露呈するかしらと思ったが、意外ときれいに収斂させていくことができたしね。
ただ。でもね。やっぱり「パチもんくさいぞ」というムードが底辺に隠されているのは、いたしかたのないことなのでしょうか。