(監督:崔 洋一)
ある意味、学生の寮生活日記。
全編を包み込むトヨ〜ンとした澱に満ちあふれる心地よい空間。まったり感に身を委ねて、ただ、ああ、面白いなぁと感じていればいい。そんな映画であった。そう、おかし味にあふれた刑務所ライフを端から眺めて、癒される。それが一番である。
不思議に思ったのは、エピソードがどれも笑いを誘うものなのに、その笑いが表に出てこなかったということ。そってもおかしいのに、声を出して笑うことはなかったのだ。頭の中、そして心の中では、もう大爆笑なのに。オレだけかと思ったら、観ている全員がそう感じていたようで、笑い声が起こることはなく、しかし妙にソワソワモゾモゾしているばかり。あれはいったいなんなんだろうね。
話自体は、小さなエピソードの羅列で、ドラマチックな展開などなく、ただひたすらに刑務所のどこかおかしい普通の(?)生活を淡々と描いているだけ。なのに、おかしいのは演出の妙なのか、あまりにも世間とはかけ離れた慣習(正しくは規則なんだけどね)刑務所という場所での生活の持つ力なのか。多分、両方なんだろうな。
本来、こういう規則づくめの生活を見せつけられると、個人の自由(を制限されること)に対して敏感なオレはどうしても反発心が湧いてしまうのだが、この映画ではなぜかそういう気持ちは1ミリも出てこなかった。どうしてかと思うに、それは受刑者達がその規則づくめの生活を実に楽しんでいるように見えたからである。
禅僧の修行みたいなもん? あるいは中学生の男子寮生活? まあ、自分から望んで、というわけでもないが、彼らは、その生活を楽しんでいる。だから観ていても、自由を奪われたという感じがまったく感じられないのだ。実に楽しそうであり、あんなんだったら入っちゃってもいいかなぁ、と思えたりもしちゃう(思っちゃ、ダメダメ)。
まあ、そうは云っても、結局彼らは犯罪者であって、その内面には様々な闇が隠れていたりもするんだけれど。しかも改心したといいうわけでもなく、あっけらかんと日々を過ごしているということには、少々、怖さがないわけでもないけれど、ね。
それが云いたかったのか? んなわけないか。