(監督:チャン・イーモウ)
傷をなめあうどーけ芝居
なんといっていいのだろう、これは。泣けた。しかしそれはオレが求める涙ではない。あまりにも切なく、哀しすぎる。しかし、にもかかわらず、嫌な後味ということでもないのだ。それは悲劇であるにもかかわらずそこに描かれているのは市井の人達の善意であるからだ。そして、彼ら全員の至福のときを描き出しているからだ。
善意。といってもそれはけして素晴らしいものではない。打算や偽善が入り交じっている。だからこそそれはリアルに感じることができるし、逆に、打算に割り切れない、人の心を見事に映し出していると思うのだ。もし、本当に自分のことだけを考えての行動ならば、あっさりと少女を見捨ててしまうだろう。それを、自分のためでもあるといいながらも、結局は、助けてしまう。そういう人々の気持ちがそこには詰まっている。
だからこそ、あの結末は、あまりにもつらく哀しすぎはしないだろうか。少女に待っているのは、けして幸せではない。厳しい現実に押しつぶされたりもするだろう。しかし、この話においては、この終わりかたこそが、ベストだったのだろうとも思う。けして後ろ向きではない、逃げているのではない終わり、すなわち、はじまりをエンディングに持ってくることで、現実にはつらい話を、つらいままで終わらせてはいない。そう思える。
そう思わなけりゃ、やりきれない。