(監督:蜷川幸雄)
蒼色のぉ片想いぃ〜、見つめてぇ〜るぅ〜、まじまじと〜、見つめてぇ〜るぅ〜
期待はずれ。いや、正直なところ期待どおりの平凡さといったほうがよいのか。
本当は映画について語るべきなのだろうけれど、その前提となる話が雑でどうしてもそこに触れざるを得ないのだ。原作者の書く作品は、確かにリーダビリティはあるんだけれど、オリジナリティと、周辺状況に対する勉強が浅いととられてしまう欠点があって、故にどうしても不完全燃焼となってしまう。物語を進める上で、自分の設定を成立させるために(確信犯だとは思うが)一般知識をオミットしているのだ。それがウソ臭さという悪い方向に作用してるような気がしてならない。
例えば、あのような家庭の状況において、誰もなにも手が出せないというのは明らかにウソ。司法介入は確かに難しいかもしれないが、児童虐待の可能性が大きいのであれば、行政が出動することはできるし、現実にあるのだ。これはこの物語を成立させるために、無理に現実を曲解していると思われ、そしてそれが話を盛り上げるために効果をあげてもいないのだ。
まあ、そんな些末な部分は別として、話としてどう、といわれると、これまた首を傾げざるを得なかったりする。基本的に元々の話が悪かった(軽く目を通しただけで、予断が入っているのはスミマセンではあるが)。一言でいえば、あまりにもありがちな話。過去に幾度となく『語られたやむにやまれぬ理由からの殺人』という設定に対して、新鮮味がまったく感じられないのだ。このようなテーマを語る上では、ホァイダニット?やハウダニット?を主眼とするには、それなりの新機軸と、もちろん覚悟が必要なのだ。にも関わらず、ここで描かれたのは、ようするに「どこにでもある話」である。おそらく、“売り”としてはごく普通の少年犯罪なのだと思うが、それって今の社会じゃすでにありふれたものなのだ(それはそれで忌むべき悲しい事実なのだが)。 しかも、話の着地点も、エクスキューズはつけているつもりなのだろうが、なんのことはない。ありがちな逃げをうっただけで、「死をもって感動してくれ」という、安直な発想には作り手としての誠意を感じることはできなかった。
まあ、あえて観るべき点としては、役者陣の頑張りで、二ノ宮@嵐や山本寛斎など、熱演である。それは監督の指示の出し方なのかなぁ、とは思う。が、だからといって話が面白くなるわけではないからね。
あややである。笑った顔よりも、無表情な顔のほうが可愛いよね。でも、演技については、少なくともこの映画については? 起用がはまったとはいえなかった。絵面的にはむしろ“美少女殺人者松浦”みたいな話がみたいっすね。