(監督/製作/脚本:ローレンス・カスダン)
くぅ〜るくぅ〜るりぃ〜、ユーフォーキャッキャー
これは恐怖映画ではない。怖くない。怖くないっていいきってしまう自分に問題があるのかもしれないが。
しかしこれは明らかに“恐怖”を目的としているホラームービーとして作られているわけではない。確かに、起のパートにおいては、じわりと忍び寄る得体の知れない異物に対する怖さを前面に醸し出してはいるが、それはあくまでも“つかみ”として、そうなっているだけで、その恐怖を目的とはしていない。それは観進んでいくうちにすぐ判ることだが。
ではこれはどういう映画なのか。どういうジャンルなのか。答えは簡単である。ごった煮風SFスペクタクル。それがこの映画の正体である。
どうなるのか展開の読めない物語にハラハラドキドキさせられる。それが上手い。
ここで提示されるいくつものアイディア(超能力、異星人、etc...)は、一般的にもキング的にも相当に使い古されたものだ。それをどう組み合わせるか。そしてどう話を転がしていくか。簡単にいってしまえばそれだけなのだが、その結果、いままでのキング的世界観ではない、ワイドバロックスタイルのSFを生み出し得るということに驚きを禁じ得ない。
すごいと思ったのは、ストーリー展開の裏切りかたである。
4人の幼なじみの物語はいかにもキング的。そこにかかわる超常能力の秘密。謎の凶悪生物。こういう設定だと普通は“生物対超能力者”それも“人知れずの戦い”という図式になるべきなのに、急転直下、“軍対エイリアン”という図式が入り込み、しかも、それが“群対軍”、“異星人対異星人”というように複雑に入り組んでいく。これだけ複走するストーリーであるにもかかわらず、混乱破綻させることなく展開させまとめ上げきるのは、原作の力なのかもしれないが(ただの力技ともいうが)、脚本と演出の力も十分にあってのことだろう。
さらに驚くのは、主人公である4人それぞれが活躍する場をきちんと設けることなく簡単に死んでいくこと。なぜ彼らが存在することになり、なんの為にあったのかがないまま消えていく。もちろん、ストーリー上はそれなりに重要な役を担ってはいるのだが、でも超能力者である必要性はあまりなかったりする。彼らはストーリー展開上、不要と云うことではないが、あまりにも使われていない。そいういうあっさりと枝葉を落としていってしまう部分は「え? そういう展開になるの?」とセオリーはずしがけっこう新鮮なのであった。
と褒めてはいるのだが、冷静になってみれば、既出ネタの再構成の面白さは、半面目新しさとは極北の面白さであり、いわゆる「そうかそうだったのか的ビックリ仰天な感じ。センスオブワンダー的な驚き」には欠けることもまた事実である。
後半の、心に問題のある上官との戦いから、クライマックスのエイリアンとの戦いまでの予想外の展開にしても、完全に予想外ではなく、想像の範囲内であり、まったく思ってもみませんでしたという程ではの驚きしかない。それはこの話の構築構造上しかたのかにことだけれども、心のどこかには、あっと驚かせて欲しい気持ちはないわけではなく、そこらへんにおいては、まあ寂しさは否めないのであった。
なんてことを思いつつも、映画のよどみない語り口にはまんまとのって見ることができたので、不満はないのだが、ね。