(監督:北村龍平)
飛び散る血飛沫、跳ね回る太股
う〜ん、なんだろうなぁ。
意欲に身体がついていっていない感じ。
これはバジェットとかの問題じゃないな。
監督の演出の問題なんだろうとオレは思うんだが。こういうことがやりたい、こういうアクション演出をやりたいという意志/意欲はあって、それに向けて努力しているのも十分にわかるんだけど、なんか今ひとつツメが甘いというか、伝わってこないと云うか。頭には伝わってきても心には伝わってこないのである。すべてが上滑りで、ぶっちゃけ監督の一人相撲にしか思えなかった。
そう感じさせる要因を分析すれば(なかなか端的には云い得ない部分ではあるが)、おそらく緩急のつけかた、あるいはタメのとりかたといってもいいけど、そこらへんのさじ加減が甘いのだと思う。アクション(殺陣といってもいいけど)とは、動と静の絶妙のバランスがあってこそのもので、ただ早いとかだけじゃ、ここが凄いという強調されるところもなく、結果、浮ついた印象だけが残ってしまう。と自分は思う。第一、そんなに速度感があるかっていうと、そうでもないし、結局、早くみせる力がないってことなんだな。
それにチャンバラの動き自体にも新鮮味がないのも問題。どこにでもあるチャンバラで、「圧倒的な力の差を持つ刺客」を印象づけられていないのである。もう少し、その力を絵として表現することを念頭におけば、チャンバラの組立かたも変わってきただろうに。
話的(演出的)には、登場人物の設定が、“真面目”なのか“不真面目”なのか、の振幅が大きすぎて、雰囲気をつかみきれないという点にも、ひっかかるところである。猿やバカ3兄弟とか、あきらかにコミックリリーフ的な位置づけとして登場させているにもかかわらず、その役に徹しきれていない(役者がではなく、演出者が、だ)。これは脚本のブレのせいでもあるといえる。もう少し、全体のトーンを決めてほしかった。
なによりも主人公あずみにしてからが、どういうキャラにするのかが不明瞭なのだ。菩薩にして夜叉というのは言葉にすれば簡単だが、それを表現し切れているのかというと、どうも首を傾げざるを得ない。菩薩というのは純真で無垢な少女ということなのだろうが、そのわりには、普通で、もっとピュアな感じなないといかんし、夜叉については、まあ先に書いたとおり強さの証明がないため、格好だけに終わってしまっているように感じられる。オレとしてはもっとクール&ピュアなサイレントキリングマシーンの殺伐とした生き様を見せてもらえると思っていたので、なんかがっかりするばかりであったというわけである。