CHART-DATE : (2003/06)
作品
雙瞳
… ダブル・ビジョン

(監督/脚本:チェン・クォフー)


お話

 愛有不死


お話

予想外の大ヒットだった。話も雰囲気もオレ好みでなんでもっと話題にならないかなぁ、と思う。あ、オレ好みだから、一般受けしないってこと? まいったなぁ。

 なによりも、絵づくりが上手くて、ダーク基調で抑えめのネオゴシック(?)。クールで淡麗にして硬質な演出と映像。雰囲気が実によく、要所要所の見所はケレンハッタリを効かせてくる。見事である。

 絵づくり重視の映画は、話が疎かになりがちだったりするのだが、と書き出すとお判りだろうが、話がよいのだ。ハードボイルドタッチのミステリーである。落ちぶれた刑事が出会うオカルト的な事件。解決のために訪れるFBIとの奇妙な友情。そして、予想もしない展開。これに壊れかけた家族のエピソードが絡む。ここまで盛り込むとどこかが破綻するのが普通なのだが、これが必要十分な部分をきれいに整理し、無駄がない。故に観ていて弛みがでない。これまた見事である。
 なにしろ、話が二転三転して、解決したと思ったら、さらに。という、お約束ではあるが緊迫した状況の展開に、心臓は鷲づかみ。緊張感が途切れないというのは実はすごいことなのだ。後半の山場である、総本山への突入シーンも、陰惨で血みどろの残虐シーンではあるが、早いカット割りでありながら抑制された演出で、ぎりぎり下品にならない。
 クライマックスの教祖との対決シーンは、それまでのリアルな雰囲気から、蒼色を基調とした幻想的なシーンへと変化し、その内容と美しさのギャップが凄味を増す。ここではじめて開かされる双眸の謎には、納得いく驚きがある。

 なによりオレ好みなのは設定の妙で、道教のオリエンタリズムなオカルティズムである。アジアの宗教観をもって、ここまできっちりとしたロジカルかつエモーショナルなサイコサスペンスが成立させるとは、拍手喝采なのだ。途中、暗号の謎が、少々強引で嘘くさいところがないわけではないが、そこまで云ったらキリがない。

 惜しむらくはラストで「愛」なんていう陳腐な言葉が明示されてしまったところ。手垢のついた言葉で、安直なハッピーエンドっぽくするのは、悪い、とまではいわないが、ちょっとやりすぎかと思う。そこまでが、ほぼ完璧なだけに残念。でもまあここまで楽しめれば大拍手である。


お話
  1.  邦題なんだけど、確かに、そのまんまなんだけど、英語読みだと作品の雰囲気を壊してる気がしてならないんだが、どうか?
  2.  被害者が死に至る原因だが、リアリティがある反面、そんな状況下に飛び込んでいくモティベーションがちょっとね。だって怖いじゃん、確実に死に至るんだぜ。見えないんじゃ避けようもないし。

お話
★★★★★

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