(監督/脚本:チェン・クォフー)
愛有不死
予想外の大ヒットだった。話も雰囲気もオレ好みでなんでもっと話題にならないかなぁ、と思う。あ、オレ好みだから、一般受けしないってこと? まいったなぁ。
なによりも、絵づくりが上手くて、ダーク基調で抑えめのネオゴシック(?)。クールで淡麗にして硬質な演出と映像。雰囲気が実によく、要所要所の見所はケレンハッタリを効かせてくる。見事である。
絵づくり重視の映画は、話が疎かになりがちだったりするのだが、と書き出すとお判りだろうが、話がよいのだ。ハードボイルドタッチのミステリーである。落ちぶれた刑事が出会うオカルト的な事件。解決のために訪れるFBIとの奇妙な友情。そして、予想もしない展開。これに壊れかけた家族のエピソードが絡む。ここまで盛り込むとどこかが破綻するのが普通なのだが、これが必要十分な部分をきれいに整理し、無駄がない。故に観ていて弛みがでない。これまた見事である。
なにしろ、話が二転三転して、解決したと思ったら、さらに。という、お約束ではあるが緊迫した状況の展開に、心臓は鷲づかみ。緊張感が途切れないというのは実はすごいことなのだ。後半の山場である、総本山への突入シーンも、陰惨で血みどろの残虐シーンではあるが、早いカット割りでありながら抑制された演出で、ぎりぎり下品にならない。
クライマックスの教祖との対決シーンは、それまでのリアルな雰囲気から、蒼色を基調とした幻想的なシーンへと変化し、その内容と美しさのギャップが凄味を増す。ここではじめて開かされる双眸の謎には、納得いく驚きがある。
なによりオレ好みなのは設定の妙で、道教のオリエンタリズムなオカルティズムである。アジアの宗教観をもって、ここまできっちりとしたロジカルかつエモーショナルなサイコサスペンスが成立させるとは、拍手喝采なのだ。途中、暗号の謎が、少々強引で嘘くさいところがないわけではないが、そこまで云ったらキリがない。
惜しむらくはラストで「愛」なんていう陳腐な言葉が明示されてしまったところ。手垢のついた言葉で、安直なハッピーエンドっぽくするのは、悪い、とまではいわないが、ちょっとやりすぎかと思う。そこまでが、ほぼ完璧なだけに残念。でもまあここまで楽しめれば大拍手である。