(監督:ジョナサン・モストウ)
ダダン・ダダン・ダダン
思いも寄らない佳作に仕上がっていてビックリ。もっとチャチな感じ、とゆーか、過去の話にオンブにダッコの、辻褄の合わない中途半端なアクションだけの映画になるかと思ってたのに。
ところが、これが話として実によく練られていたのだ。「何故、未来からターミネーターがやってくるのか」「歴史は改変されるのか」という、このシリーズにおける大前提となる設定に対し、本気でトライしている。しかもその結論として「歴史は(弾力性はあっても)変わらない」という、実に冷徹な答えを用意する。SF的に実に正しく、その潔さにセンスオブワンダーを感じずにはいられない。
パート2において歴史は分岐する。『歴史は変わる。明るい未来はある』というSF的テーマを、その答えはそのままに『機械に心はあるか』というパーソナルなテーマに変容させることで成功させたのに対し、『歴史は変わらない。それでも未来はある』というアンチテーゼをもって、真っ向勝負しているのだ。だからこそ、あのラストシーンでの「時間の円環構造がきっちりと閉じていく」ことで描かれる運命が感動となる。
で。肝心のアクションについてだ。驚いたことにこちらも思った以上に、というか十二分に素晴らしい出来であったのだ。単なる肉弾アクションだけだったらイヤだなあと思っていたのだが、そんな心配は杞憂であった。確かに派手なCG系VFXではない。そういう意味では肉弾系だろうが、つまりは肉体をどう表現するかにVFXに命をかけている、そんな感じ。
痛みを持ったアクションというのが宣伝文句だが、オレとしては、むしろ重みを感じさせるアクションだなぁと思った。例えば、投げられる、ぶち当たる、つぶされる、そのひとつひとつに「ズシン!」という重々しさを持った破壊力を表現している。このようなパワーを感じさせるタイプのVFXは確かに現在の主流ではない表現だと思うが、これはこれでよい。実によい(ニッチともいえるが)。しかも過剰さが生み出す馬鹿馬鹿しさ可笑しさまで描ききっている。「んなわけあるかい!」そんな心地よいツッコミを入れられるVFXアクション。好きなんだよなぁ。
なにより2時間という過不足ない時間を有効に使うため、アクションつるべ打ち状態で、だれるところがないってのが凄い。
他にも、過去のシリーズを踏まえた上でのテンドン的小ネタを、幾多配置し、きっちりと笑いをとる余裕も忘れていないってのも好印象。T850出現シーンにはもう大爆笑。やりすぎ?と思えなくもないけれど、ここまで割り切ってエンタテイメントしてくれれば拍手するしかないでしょう。
これだけやってくれれば、そりゃダメだしするほうが難しいってことですよ。話がよくて、眼福もあって、これでつまらんといったら罰が当たる。