(監督:ジョージ・A・ロメロ)
ギクシャクギクシャク、ンガァ!(ゾンビ視点)
ドキュメンタリータッチなのはモノクロだからだろうか。あるいは役者が素人っぽいからか。なんにせよ、ドラマチックな映画ではない。クールというのとも若干違うが、登場人物たちとの距離を普通より大きくとった印象がある。
今更の古典ではあるが、あらためてみると、怖いという映画ではなく不気味といったほうが似つかわしい。全編にわたる不安感と焦燥感がこの作品のコンセプトであろう。実のところ初見だったわけだが、思ったより、陰惨な話ではなかったのも意外であった。
第一、ゾンビが人を襲うというのは基本フォーマットではあるが、映画としてはそれがメインストーリーではなく、むしろ、家屋に閉じこめられた人々の心理劇である。いかに生き延びるか、それに対して、いかに他人を出し抜くのか。疑心暗鬼のなかでの戦い。結局一番怖いのは人間である、そういう話である。
これ以降のゾンビ映画では、ゾンビ自体が恐怖の対象になるわけだが、この作品においては、観客にとっての恐怖の対象はゾンビではなく、閉じ込められた人間同士であり、閉じこめられた状況そのものなのだなぁ。と思った。
クールだなと思ったのは、ラストのゾンビ狩りのシーンで、誰もが嬉々として退治をしているところ。ハンティングを楽しんでいるかのようにも見える。いや明らかに楽しんでいるのだろう。そうなってしまえばゾンビはもはや恐怖の対象ではない。そしてそんなアッパーな状態からラストの無常観。結局、怖いのは人だというモチーフが別の角度から語られているのだなと思った次第である。
まあ、その後の影響力などを忘れて、映画として観た場合、そんなに面白いというほど面白いわけでもないんですけどね。