CHART-DATE : (2003/08)
作品
ウドノタイボク
… ハルク

(監督:アン・リー)


お話

 筋肉超人大暴れ の巻


お話

期待してなかったが、してなくてよかった。いや本当は期待していたのだ。うーん。

 問題はふたつあって、一番の問題は話が面白くないこと。超人になってしまった男の悲劇を描くという話ということはわからないでもないが、それにしても何故あのような展開となるのかがよくわからない。『エレクトラコンプレックスを根底においた父と子の対立』が主軸となっているのだが、ああ、そういうことだったのねと、はっりきとわかるのは終盤で、そこまでは、誰と誰が敵対しており、誰と誰が共闘しているのか、父親と陸軍と恋人との三者の位置関係がどの立場にあるのかがとても判りにくい。
 例えば、父親が息子を助けようとしているのかどうか。自分から軍に捕らわれてみたり、逃げてみたり、と、行動原理が不可解で、なんとなく、その場その場で話の帳尻をあわせることで精一杯で全体の完成度まで思い及んでいない感じ。そんなだから、エモーショナルなものは全然伝わってこないし、物語の悲劇性も、悲劇としてみえてこない。

 一事が万事このような感じなのだが、これが意図的に判らせないような演出なのではなく、結果的に判りにくい演出なのだ。そうとしか思えない。

 もうひとつの問題点はVFX。確かにCGはすごくよく出来てはいるのだが、いかんせん“ハルク”という怪物の凄みイコール重量感を描き切れていない。アップでの細工は変身前の主人公の面影を残す見事な作りを感じはするが、アクションになると途端に安っぽく見えてしまうのだ。それは実は安っぽいのではなく、現在のCG映像の限界なのではないかと思う。
 現実の人の動きと計算で描き出す動きの違いは、数式に落とすことの難しい微妙な『ぶれ』である。身体が動く際の、各部位ごとのわずかな無駄な動きまで計算はできない(いや、できるのだがどえらく大変というのが正しいか)。だから、普通はモーションキャプチャなどという手法をとったりするわけだが、人に在らざるモノは当然キャプチャもできない。となると計算で導き出すしかない。故にリアリティは失われていく。例えば、長距離ジャンプのシーン。あんなに遠くまで飛ぶことのできる巨大生物はいないため、飛ぶにあたってどれだけのタメが必要なのかはわからない。あくまでも計算上のそれでしかない。だから生物の力加減を感じることが出来ない。
 そんなわけで、せっかくのハルクの傍若無人な暴れっぷりも嘘くさくなってしまう。これは作品としての根幹に問題がある。しかも、アクション自体は思いの外、小ぶりで、派手なアクションでガンガンな爽快感を期待している観客には肩透かしもいいところだったのではないか。

 このようにアラを見出してしまう理由は映画が冗長というせいもあるのかもしれない。せめて2時間。枝葉を刈り込み、焦点を絞って話を作り込み、あとはCGで大暴れさせれば、傑作になったのかもしれないのに。ってそれじゃあ全部直せってことか?


お話
  1.  ハルクという超人は実は超人ではなく、コントロールのきかない暴走車両みたいな存在。ようするにモンスターである。そして唯一彼の存在を受け入れている美女との葛藤。つまり「キングコング」パターンあり、さらにつまり「美女と野獣」モチーフである。元々の原作からそうなので、それは真に正しいのだが、ただ、そんな存在をコミックヒーローとして宣伝してしまうと、そこに齟齬が発生してしまうのは当然である。だから、見終わった観客が、「なんだったんだ?」と頭を抱えるのはしかたがないのかなぁと思った。オレとしては、アイディアとしてこんなアプローチの手法自体はアリなんだけどね。
  2.  唯一の見どころは、もちろんジェニファーコネリーで、歳を重ねるごとにますます綺麗におなりに。端正な顔立ちが知的で清楚な印象を醸し出しすぎ。もう好き好き。

お話
★★ ☆☆☆

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