(監督/脚本:高坂 希太郎)
ロードレーサーといえば、、、、、ミ!ミ!
正直、全然期待していなかった。ジブリ絵の醸し出す“人情・下町・泥臭さ”な印象が、この話にはあわないのでないかと思っていたからだ。すみませんでした。十分に面白かったです。
話的には上述の不安のとおり、人情系の方向に振られていて、原作の持つ雰囲気である『血がつながっていてもベタつかない。でもそれは本当に分かり合っているからこそ』という心地よくさめた感覚がなくなっている。不要に優しさや思いやりが表層的に表現されすぎていて、なんか鼻白むことしきりなのだ。でも。まあそれは表現の違いであり、好みの差でもあり、そのくらいは多めにみてやろう。そう言わしめるだけの『良かった』があったというわけである。
それは、なんといってもレースそのものである。アニメーションなのである。展開は原作マンガと同じでも、やはり絵が動くということがこれほどの高揚感をもたらすとは。チャリの動きやレースの駆け引きなどは、動画という表現によってはじめて直感/体感することができる。例えば、トップ集団が一人ひとり順位を入れ替えながら、力を温存するフォーメーションシステム。ドイツの選手達の一直線に攻める戦略。なるほど、ロードレースの勝負とはこういうものなのか、チームプレイとはこういう仕掛けをするものなのか、など、目から鱗が落ちまくる。これは、マンガでは読みとることは難しい段取りだし、実写では(あるいは実際のレース映像では)描くことのできないカメラワークだ。
そういう絵のチカラだけで十分面白かったのだ。
やっぱり動きのある話は動きのある表現が相応しいのだなぁ。もっとも、話自体が本当に駄作なら、そういう感想にまでは至らないわけで、小気味よくまとまった話だったのだなと思うところである。