(監督/脚本/編集:北野 武)
だってこの格好のほうが。。。って単に好きなだけじゃんか!
好評判ばかりがあまりにも先行してしまっており、「ヘンな色眼鏡が作用してるんじゃないのか?」逆に心配していたのだが、思っていた以上の出来でよかった。エンタテイメントに徹していて、楽しむことができた。“チャンバラ映画を作る”という明快なコンセプトを最後まで崩さなかったところがよかった。ヘンに作家性ばかりを優先させて失敗することってよくあることなので、さすが芸をみせることの意味をわかっている。(もっとも、作家性を完全に消しているわけではないれど)
と、全体的な感想は概ね好感度高いのだが、いくつか引っかかった点もある。例えば、必要以上に観客に安易に迎合しているような部分があることで、判りやすく云えば、例えばラストのタップダンスは話の流れ上不要なのではないか。もちろん、不安(悪)が去って希望(平和)が訪れることの象徴であるが、尺として長い。もっと端的に描くだけでいいのであって、なんとなく「タップが最近気に入ってるので映画の中に入れてみたよ」という印象になってしまっている。その意図自体、別にダメなわけではないが、チャンバラ時代劇とは基本的にアンマッチであり、あまり長く描くと違和感が浮き出してしまう。他にも、笑いを取るためだけの全体からみてアンバランスなシーンがいくつかあり、そこらへんが、客に受けようと無理している感じにつながってしまっている。
北野演出は基本的にエモーショナルなものから一歩引いた冷徹硬質なところに特徴があるのだが、そこに、おちゃらけた表現が入ってきているということが違和感につながっているのだろう、とも云える。まあそのこと自体もひとつの個性であり、面白いといえば面白いのである。冒頭、作家性云々と云ったが、結局、基本的な性質は変えようもなく、それもまたよし、と思ってはいるのであった。