CHART-DATE : (2004/01)
武士
(監督/脚本:キム・ソンス)
死地において己を欲す
土臭い感じ。絵づら的にざらついた風景を舞台にしているっていうせいもあるけれど、登場人物達が、どうもね。好感度低いっていうんですかねぇ。
ここで描かれている侍達はなんとも高潔感がないのだ。己の行動意義に、あまり信念、志がない。まあ、テーマ自体が、ごく普通の(?)功名心はあれど志の高くない武士達が、いかにして武士としての生きかたを見い出したか(ってことはつまり“死に方を見い出したか”であることころが実に皮肉な現実なのだが)という話なので仕方のないことかもしれないが、そのせいで誰に感情移入する事もなく比較的客観視して観てしまったところがあり、ちょっと損をしたかな、とは思う。
大陸の持つ特性なのか、時代の持つ特性なのか。あるいはお国柄なのか。出世や功名のために腐心する侍の生き方に、キャラクター設定に対するリアリスティックなありようを感じた。別にそれが悪いという訳ではなくて、本当はこういうほうがより現実に近いのだろうとは思う。思うけれど、少々悲しいな。対する、明の姫も相当な我侭高慢ぶりで、一国の姫君はこうなるのだろうなという感覚でリアル。
かと思うと、一応主人公であろう元奴隷も志が高いようで、実はなんのために行動しているのか全然わからない。己の力のはけ口を求めているのか、姫に対する想いなのか、それらが混ぜこぜになっているのかもしれないが、なんか安定せず行き当たりばったり。
下級士官(?)の老兵のみが現実を見詰めつつ、導き手というか、一団の良心として機能しているが、焼け石に水であったりもし、相対する蒙古軍のほうがオトナであるというかサムライとしての覚悟があったりもして、ここまで観客の同情をシャットアウトするつくりも凄いと思う。あるいはそう感じるのはオレだけなのだろうか?
というわけで、観ていてけっこうしんどい逃走劇が続くわけだが、クライマックスのろう城戦でようやく男達をはじめ皆の“覚悟”ができる。これで一気にラストまで疾走するのかと思いきや、なんか時間がなんとなく長く感じるのだな。たぶん何夜もかけてだらだらとすごしたりするから? もっとも消耗戦であるろう城とはそういうものなのだろう。そういう部分でもリアルなのかもしれない。
アクションについては、完全なリアルバウトではなくワイヤアクションなども取り入れてもいるが、基本的には華麗さや見た目の派手さを排除した演出で、やはり無骨なリアルさを追求しているように感じた。印象としては悪くないんだけれど、韓国特有の血糊べったりの感覚はあまり好ましくはないなぁと思う。
全体的にはオープニングが砂漠走破というところから入ったせいで、森や草原での戦いもあるんだけれど、全体的に土ぼこりの雰囲気が取れることがない。衣装などが薄汚れていくせいもあるのだが、なんか話が進むにつれて皆、やさぐれて土まみれホコリまみれになっていき、結果、高尚な志も感じない。そんな印象で最後までいってしまったというところだろうか。おそらくそれは製作者としての意図であることは承知の上で、なんかもう少し、ツボを造ってもらってもよかったのではないかしら、と思う死体である。ま、ラストシーン、生き残った侍が、ひとり祖国に旅立つシーンできれいにまとまったかなという感じかな。
★★★ ☆☆