CHART-DATE : (2003/12)
Coin-Locker folklore:A-track
(監督:堀江 慶)
あんな場末たコインロッカーは、呪い云々関係なく使いたくないっしょ?
典型的な都市伝説型ホラーのパターンではあるが、“うわさ”というネタを活かしきれていない。ここでいう“うわさ”とはすなわち“無作為不特定多数に対する伝播性”であり、故に「うわさ」が流布している事に対する対外的影響力を表現し得なければ、単にそういう話があると云うだけでは、なんのための「うわさ」なのかわからない。
これはこの映画のテーマそのものであるため、特に目立つのだが、それ以外にも全般的にパターナイズ先行型というか、ホラー映画によく用いられるモチーフやガジェットを安易に登用しているだけのような印象が強い。例えば、いじめのネタや、父子の断絶などもそうだろう。これらは『孤独と生のアイデンティティ』につながってはいるのだろうけれども、どうもムリヤリな感じがあり、なんか中途半端で生かしきれていない。
オチについても、「愛が憎しみを溶かしていく」というまとめ方では、あまりにもありきたりな解決パターンで、しかもそれが終わりではなく... みたいなパターンはもう使い古され過ぎているのでは。オレとしてはちょっとノーサンキューと云わざるを得ないところである。
そもそもホラーイコール怨念話に終始するというのは、ここのところの心霊ホラーの常套手段的な面があって、「結局、現世に怨念を抱いた幽霊のせいかよ!」というのは、制作者のホラー作話に対する逃げのような気がしてならない。まあ、スラッシュ系、飛び出し系のビックリイコールホラーという誤解も嫌だが、ヒュードロドロってのも、ちょっと食傷気味なのである。もちろん、話として納得できるのであれば、それもまたよしではあるのだけれど。
と、きびしいことを云ってはみたが、それはオレが、一般的な視点で観てないせいで、客観的には、新鮮味には若干欠けるものの普通にまとまっていてそこそこに楽しめるプログラムピクチャなのかもしれない。
あ、それにしてもの問題点があった。それはタイトルに『渋谷』に意味がないこと。これって『渋谷』じゃなくても話が成立するし、第一、郊外の湖が舞台だったりするのね。どうせ都市伝説をモチーフにしてホラーを組み立てるのであれば、もっと都会であること、渋谷であることにこだわりを出して欲しかったなぁ。
★★★ ☆☆