CHART-DATE : (2003/12)
一匹狼
(監督:原口 智生)
どぉーこかでぇー、だぁーれかがぁー....
やりたいことは、おそらくは妖怪映画や股旅者映画といった昭和40年代テイストのエンタテイメントの再構築であろう。それはフィルムの質感から始まって、演出部分や特撮(VFXではなく、ね)に至るまで、ローバジェットであることを逆手にとってフォローする上でもいい感じに作用しており、製作のねらい自体は成功していると思う。
ただし、それがオレツボったかというと、残念ながら「違うなぁ」という印象であった。確かに、気持ちはわかるけれど、そこまで再現しなくてもいいんじゃない? それじゃあ単なるファンムービーでしかないんじゃない? と思うのである。
例えば、ツリのワイヤ。あえて線を消さないことの意図はわかるが、それは映像の作り手の気持ちがわかるだけであって、映画を楽しむ観客の視点では、効果を示していないと思うのだ。技法とはリアリティの表現において必要だからあるのだ。過去はワイアを消す技術はなかったから、そこは目をつぶってね、ということなのであって、それを再現することは、ノスタルジーでしかない。映画として楽しませるのであれは、現在の技法をオミットする必然性はないと思う。だって、せっかくマジに話を進めているのに、「これはウソですよ」という証拠が丸見えちゃったらどうしても興ざめしてしまうでしょ。せっかくのいいネタや、積み上げていった雰囲気をそんな些細なことで捨て去ってしまうのは誠ににもったいないと、オレは思うのでる。
話自体は、まあ妖怪股旅物というキワモノで、パロディかと思わせる部分はあるものの、悪くない。全体としてまとまっているし、納得できる仕立てになっていると思う。
もうひとつチェック入れるとすれば、妖怪の扱いが少々もったいないってところだろう。妖怪であることの意味というか、たんに「血が青い」とか「異形の姿」とか、そういうみてくれの面だけではなく、妖怪としてのアイデンティティとしてのなにかを感じさせて欲しかったと思う。ま、それはないものねだりが過ぎるのかもしれないけれど。
★★★ ☆☆