CHART-DATE : (2003/12)
指輪物語 王の帰還
(監督/製作/脚本:ピーター・ジャクソン)
「すっかり書き終えたよ、サム。」フロドはいいました。「最後の何ページかはお前が書くんだよ。」
なんとも圧倒的な映像絵巻であろうか。
そして、ともかくも、あの「指輪物語」の完全な完結、というその事実にまずは感涙する。
3時間近い映画であるにもかかわらず緊張感が途切れず、最後まで一気に観きり得る。
それは本編がこの長い物語自体のクライマックス部分であるからだが、それにしても3時間という長丁場である。大きな戦いと隠密行という、ふたつの異なる物語を巧みに絡ませながら描く演出が飽きさせない、ダレさせないということなのかもしれない。物語自体は偉大なる原作の力、構成力によるところは大きいのだが、それを観客に対して、効果的に提示するというのは見事なことであると思う。しかも、トリッキーな映像演出などの小手先の技に走らず、直球勝負で描き出しているということに敬意を表したい。
映画は映画として観る。というのがオレの信条ではあるのだが、なにしろ原作「指輪物語」は、昔から何回読み返したかわからないくらいの(いや、本当はわかってるんだけど。3回です。全然威張れません)物語で、自分におけるハイファンタジーの原点であるのだ。だから、そんじょそこらのファンタジー小説が所詮はRPG経由の縮小再生産にみえてしまってしかたがないということもあるのだが、まあ。それくらい思い出のある話なのである。で、そんなすれっからしのオレを、力技でぎゅうとばかりにねじ伏せられ納得させたれてしまったのだ、ということ強く吐露したい。
イマジネーションの見事さってのもあって、モルドールのトロルやゴブリン、オークそれぞれがきっちりと描き分けられているのも単純にすごいと思ったが、それ以上に、彼らが太鼓を叩きながら兵士を鼓舞するシーンとか、それぞれの種族が種族なりの特徴を持って行動していることをきっちり描いていることがすごい。異形の者達同士の戦いを、それらしく描くという、ファンタジーとしてどうあるべきかをわかっているなぁ、と感心かつ感動した。
というわけで、この大いなる物語はこれで完結した。ありがとう、ピーター・ジャクスン。
★★★★★