CHART-DATE : (2004/02)
古き良き・・・
(監督:マシュー・カソビッツ)
怪奇版女囚サソリ
超自然モチーフではあるが、ホラーではない。むしろサイコサスペンス。幽霊が存在したからといって即ホラーだなんていわない。幽霊は素材であって、ホラーはストーリーが作り上げるものだからね。まあ、そんなことはどうでもいいか。映画としてどうだったかってことでいけば、面白かったわけで、ジャンルとしてどうかはその次のお話なんだ。
で、とりあえず面白かったとして。
でも不満ももちろんあるのである。サスペンス、ミステリーの部分では、どうだったかというと、やはりアラがある。ストーリー前半、どういうふうに話を進めていくのか、なにがやりたいのかが、あまり素直に伝わらないのである。それは、この映画が実体としてはサスペンスであるにもかかわらず、ホラー(というよりも心霊系といったほうがいいか)だと、製作者側が誤解してつくっているせいではないか、とオレは予断している。そんなわけで、構造としてのミステリーの物語をきちんと構成しきれていないために、話の流れが見えず、だから全体としてどういう展開を狙っているのか判らないという混乱をきたしているというわけだ。
中盤以降、主人公が、“逃げる”から“追う”に転換してからは、主人公の目標と同時に物語としての目標が定まり、きれいに流れだしていく。やはりミステリーにはミステリーなりの表現があるのだと思った(それが具体的にどういうものかはオレもよくわからないが)。
もっとも、少女へのレイプ犯が、実は連続殺人犯であったという設定はかなり唐突で、しかも今なお生きて囚われている少女がいるという件に至っては、途中に伏線が張られていなかったので、悪い意味でビックリした。そこらへんの雑さはもう少し考えて欲しかった。
よろしくないといえば、瑣末なツッコミにはなるのだが、元職員が自分の病院(という名の刑務所)に入れられてしまうのは、非現実的だと思う。そういうような些細な甘さが全体に与える印象ってけっこう大きいと思う。
絵づくりとして、タイトルどおりのゴシック基調の寒色系でまとめあげた画面づくりが、素晴らしく、眼福としては満足している。
★★★ ☆☆