CHART-DATE : (2004/02)
天地英雄
(監督/脚本:フー・ピン)
黄砂と交叉
敵味方入り乱れての秘宝争奪戦。例によって事前情報をあまり入れてない中で観に行ったので、思っていた話と違っていて、だから逆に楽しめた。薄々、戦乱時代の侍達の物語であるということは知っていたが、それが歴史絵巻的な話だとアウトだったのだ。なぜなら苦手だし嫌いだから。反対に侍自身に焦点のあたった物語だとセーフ。って感じ。ところが、結果は、戦国モノっていうよりシリアス調の活劇っぽかった。秘宝が出てくる時点で“違う”し、しかも秘宝の正体が“賢者の石”的なものだったとは、すでにリアル戦国じゃあないでしょ。だから、いいのだ。
というジャンルの映画であることはわかった。では、物語はどうだ。
話にしっかりとした芯が一本通っていることと、登場人物の漢気が爆発で面白かった。特に、中井貴一の異郷の戦士ぶりにはお約束ながらグッとくる。一人一人の侍達の漢魂(あるいは侍魂でもいいが)の見せ場もあり、とにかく「武士道とは死ぬ事と得たり」的なカッコよさで満ちている。それ自体の是非はともかく、話としてはオレのハートは鷲掴みだったな。
基本的には楽しめる物語であることを前提として、あえて云わせてもらえば、ストーリーにアラがあるね。
追われる身としては逃げ場を探しているとはいえ、ろう城しても敵わないわけで、苦しくてもひたすら先を急ぐべき。なんか話を決着させようとして部隊を全滅をさせるために無理矢理逃げ道を捨てさせた感じがあって、それはイコール感動を強要しようとしているようでもあり、ちょっと違うんじゃないのかなぁと思った。
もうひとつ、守るべき宝が『神の力』であるのはいいとして、クライマックスで簡単に発動というのはせっかくリアルな物語を進めてきたのにちょっと卑怯だな。少なくともこの手のシリアス調映画においては、奇跡とは安易な機械ではなく、偶然としてあるべきであり、例えば、砂漠の地下水脈のエピソードのような展開こそが、奇跡なのではないかと、オレは思うがなぁ。
カメラワークが、俯瞰や遠景、アップと、緩急ついた演出で、絵づくりとして目配りが届いていてそういう眼福はあった。だからこそ悲惨な逃走劇が救われているのだとも思えるしね。
★★★ ☆☆