CHART-DATE : (2003/12)
機械工
(監督:ブラッド・アンダーソン)
ボク、ほねかわすじえもん。
トリッキーなストーリーかと思いきや、思ったよりもシンプル。なのかな? なのだな?(ちょっと自信ない。。。)
ストーリーに関しては「主人公の罪の意識による記憶喪失」という一人称ミステリーの王道(?)モチーフで、実にシンプルだといっていいと思う。
それを複雑なものにしているのは、脚本がストーリーを展開していく上で、かなり大掛かりなカットバック方式を取り入れ、時系列を意図的に不明瞭にして誰がいつ体験したことなのかを判らなくしていること。そして、擬似一人称による主人公の主観をメインとした映像であった(映画だから見た目三人称なんだけど、実は一人称であるということ。もっと簡単にいうと画面に描かれているものは現実だけではなく、主人公の妄想が紛れ込んでいる)というアクロバットを行ったこと。
このせいで、ストーリー自体も難解になっているような錯覚を生み出しているといえよう。
実際のところは、個々の事象を因数分解していけば、単純なつくりの話だと簡単にわかるのだけどね。あるいは、そのくらい単純な話にしておかないと、脚本として収集がつかなくなってしまう、ということはあるのかもしれない。
そういう構造であることが途中で判ると、マルハゲ男のシークエンスや母子のシークエンスなどは、それが妄想であることが、判りやすい暗喩(それって暗喩とは云わないか)で表現されていることに気づく。もっとも、そこから「実は。。。」という部分が気づいてもらえるよう、ある程度バレることを意識して脚本も書かれているのだろう。
ということは、主人公が抱える謎の解明が映画としての決着ではなく、主人公の妄想/幻想を如何に克服するのかということがこの話の骨子なのだ。ということはすぐにわかるし、だから「実は誰々は誰々だったのか!」というような意味でのサプライズはない。しかし、色調をいじった悪夢的な画面づくりや、物語の進行の見事さで、映画としてはうまく魅せられた感じである。楽しめた。
語り口で楽しませるそんな感じのサスペンスの佳品だった。
主人公の激痩せぶりに役者バカの魂をみた。
★★★ ☆☆