 
CHART-DATE : (2003/12)
 
 
(監督:冨樫 森)
 
 
行け! 鉄人!
 
 
 それなりに意欲作だと思うし、がんばってるなとも思う。しかし隔靴掻痒なのは否めない。
 原作の持つレトロな感覚(意図したレトロではなく、発表時からそれだけ時間が経過してしまっているってことだが)を、現代にどうマッチングさせるかというのはけっこう悩ましい課題で、なんとか整合性をとろうとしているのはよく判った。
 しかし、それが成功してるかというと、ちょっと首を捻らざるを得ない。特に絵づら的にはかなり問題で、ビジュアルが作品の成否にリンクするSF映画としては、これはいけない。
 例えば、正太郎君の服装が現代感覚を持っていない。原作のブレザーに短パンという設定をむりやり生かすために着せている。制服っていう設定のようだが、やはりずれている。
 ロボットのデザイン、特にブラックオックスのそれは個人的にはとても好きなのだが、ストーリー上にうまくマッチングされているとは思えない。そこにはそれなりのエクスキューズが必要だと思うのだが(例えば戦後に作られたものが残っていて、とか)、現代人が作ったモノというには無理がある。
 事ほど左様に、細部の詰めの甘さが積み重なっていくことで、作品全体の「リアリティの欠如」へつながってしまう。細部に紙が宿ると云う。ならば、この映画には、神が宿りきれなかったとしか云えないだろう。
 では、ストーリー的にはどうかというと、あまりにも一本調子で捻りがない。ある意味それは直球勝負ということで好感が持てなくもないのだけれど、もう少しツイストさせてもよかったのではないか。
 主人公が少年ということはイコール成長の物語であることは半ば義務付けられたようなものである。特にこの話は「夏の物語」なのだから、ならば少年のひと夏の冒険と成長というテイストをもっと前面に押し出せばよいのに、残念だ。
と、いいつつ、実はそれなりに楽しんだというのは云っておきたい。それは、この映画が基本的に(良くも悪くも)単純かつ明快な作品であったからに他ならず、それは“鉄人”という牧歌的な素材だからこそ産まれた結果なのかもしれない。
 
 
 
 
★★★ ☆☆
