CHART-DATE : (2003/12)
森の谷のトゥーラ(?)
(監督:杉山 慶一)
良くも悪くも今をときめく若手クリエイターが製作した(冒険活劇SFファンタジーの)宮崎アニメ。だよねぇ。
映像としてのアニメーションはさすがGONZO作品というべきか、高クオリティだと思う。2Dと3Dの共存が実にスムースで、過去の蓄積と的確な応用を感じる。特にすごいと思ったのは冒頭のシークエンスから連なる濁流のシーンで、3Dなのにいかにも“CG”でもなく、かといって手書きアニメ風でもない、アニメとしてのリアルを感じさせられた。だからこそそこに人物等のセルアニメ(っぽい)絵がのっても違和感がないってことなんだろう。さすがである。
だが、映画として楽しめたかというと、それはまた別の話で、正直「うーん」と首を傾げてしまうのだ。一番大きな理由は「ストーリーが古くさい」ってこと。簡単にまとめると「環境の変化で崩壊してしまった未来の地球を舞台とするSFファンタジー」なわけで、それっていかがなもんでしょう。20年前ならいざ知らず、今に至るまであまりにも語られすぎているモチーフで、ちょっと今なんでこれを観なければいけないのかというモティベーションが感じないんだよ、自分の中に(まあ、観てるんだけど。観たから云えるんだけど)。
で、さらに、細部のツメが浅いように思う。文明が崩壊しているにもかかわらず、巨大メカのテクノロジーが維持できている理由とか、世界全体の状況説明とか、もちろん個々のキャラクターの掘り下げとか、時間の制限はあるにせよもう少しやってほしかったなぁと思う。
特に、遺伝子改良して進化し意思を持った森という設定なのだから、森自体の説明はもっと丁寧になされるべきだと思うのだが。あまりうまい説明ではないけれど、新しい何かを導入する際に“特殊ななにか”というような安易な逃げの説明はちょっと幼稚な気がする。それが通用したのは20年前くらいまでなんじゃないだろうか。たとえ嘘八百でもいいから理論をでっち上げて煙に巻いて欲しいのだ。
とはいいつつ、それはスレきった人間の感想だからね。こういう映画をこれから経験していく若い人達には十分楽しい映画だと思います。
★★ ☆☆☆