▲南船北馬トップページへ

八重山にマブイ落としに  …15

 後悔役立たず   

 朝起きてみると身体が痛かった。皮膚がつっぱったようないやな感じ。典型的な日焼けだ。そりゃそうだ。強い陽射しの中、特になんのケアもなくうろつきまわっていれば、誰だって日焼けする。
 いや用心していなかったわけではない。海に行くときは日焼け止めクリームを塗っていたし、第一、Tシャツを着て海に入っていたので、大丈夫だろうと判断し、そしてそのとおり大丈夫だったのだ。顔も腕も焼けることは焼けたが、そうひどいことにはなっていなかったし、だから過信していたのかもしれない。

 一番、ひどい患部は足。というか足だけが日焼けしていた。考えてみればそれも当然なのだ。顔や腕は普段から露出していて陽光にある程度の耐性ができている。ところが足はそういうわけにはいかない。効果てきめんである。
 考えるに、それは珊瑚礁ダイブの帰りから始まっていた。船上でだらけていたとき、足がチリチリ焼けるような感じがあった。それが効いたらしい。「やばいかな?」と思い、一応タオルを足にかけてカバーしたものの、時すでに遅しというやつだ。
 そして今日、朝の日の光を足に受けるだけで、ジンジンと紫外線が足に突き刺さるのを実感している。このままではいかん。と長パンツに変形合体し(セパレートタイプのパンツを持っていっていた)、なんとか光地獄からは逃れることができたが、しかしパンツの生地とこすれるのがまた思いきり… 前門の陽光、後門の摩擦である。自業自得の四面楚歌とはこのことだ。う〜ん…
 それでもなんとか旅を全うすることができたのは、昔ひどい日焼け(これも迂闊な自分の判断のせい。全然進歩してない)を被ったときに買っておいた、火傷用クリームを持ってきていたおかげ。まったく用意周到なのか、迂闊なのか自分で自分がよくわからん。
 そんなわけで、ただでさえテェゲェでダラダラな動作は、さらに鈍いものになり、それはほぼ2日つづいたのであった。

 しかし、肉体への損傷はこれだけではなかった。コンドイ浜で珊瑚に引っかけた踵は、そのときはちょっと切れたぐらいだろうと思ってそのままなんの手当もしなかったのだが、これがどうもいけなかった。時がたつにつれて、次第に踵が熱くなってきたのだ。
 軽い炎症を起こしたらしい。手で押すとズキリとする。
 ただの炎症じゃないのか。とよく調べると、傷の中に珊瑚の破片が食い込んでいた。これは腫れるはずだ。珊瑚の傷は治りにくい。まさにそのとおり。トホホ的気分を味わいながら破片を取り出し、応急手当を行う。取り出すための針や消毒グッズはなぜか持っていたのだ。再び、用意周到なのか、迂闊なのか自分で自分がよくわからん。

 ところで、迂闊な怪我はオレだけではない。ぽんすけも珊瑚で腕に擦り傷をつくっていた。まあよくある怪我ではある。だから全然平然としていたのだ。
 さて、石垣島の本屋で「沖縄の生物事故データブック」(というような感じのタイトルの本)を見つけた。ひやかしにパラパラみていると、あるわあるわ。症状のカラー写真と詳細な説明に、見ているほうが痛くなってくる。
 で、有名なハブやクラゲの事故症例に混じり、珊瑚による怪我というものがあり、そこには「擦り傷から珊瑚の針が入り込み、かゆみを伴いながらなかなか完治しない」。というようなことが書かれていた。それまで、他人事のように読んでいたぽんすけの口数がみるみるうちに少なくなっていったのは、いうまでもない。


次のページへすすむ