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レンタカーでまわる観光は快適だ。行動範囲は格段に広がるにもかかわらず、体力的にも楽〜らくである。しかも、常に冷房甘美(誤字ではない)で、灼熱地獄が嘘のようだった。
退屈といえば言い過ぎだが、自分から出来事に飛び込んでいかなければ面白いことに出会えない。まあ普段ならそれが当然なのだけれど、ここ数日間放っておいても何かが起こる、そんな日々に馴染んでしまったらしい。
さて、サトウキビ畑のあいだを車は走る。
目的地は竜宮城鍾乳洞。平成に入ってから発見された鍾乳洞で、できたての観光スポットで、当然だが日本最南端の鍾乳洞とのこと。平日ということもあり観光客もまばらで、どことなくのんびりと、そしてちょっと寂しい鍾乳洞探検だ。
自然が造り出す造型美を堪能しつつ、予想外に広い洞内をうろつきまわる。我々だけ、ということではなかったのだが、他にひとりの客に会うこともなく貸し切り状態だった。
内容は他の鍾乳洞さほど違いはない。鍾乳石を観音像や龍などに見立てて、名前をつけるの含めていずこも一緒である。なるほどなるほどと見てまわったわけだが、ただひとつだけ「これはすげーや」と驚いたことがあった。鍾乳石の成長速度の速さである。洞内順路のコンクリづくりの階段を降りるとき、ぽんすけがオレを呼んだ。
「これこれ、すげー」
「?」
なにごとかいと足下に眼をやると、階段の上に鍾乳石が10センチ程伸びてきていた。普通に通り過ぎれば誰も気づかないだろう些細なものだ。しかし考えればこの道ができたのは、ほんの10年くらい前の出来事なのだ。要するにわずか10年足らずで、ここまで成長したということだ。
鍾乳石って、普通こんなに早く成長するもんなのか? ううむ、と唸るオレ。やはり南国は違うと妙な納得をするのだった。
ちなみに後で気付いたのだが、この鍾乳洞の売りのひとつは『日本一早く成長する鍾乳石』だそうで、なるほど看板に偽りなしなのだ。