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八重山へ今度こそマブイを拾いに?  …7

 極悪ランチタイム   

ランドスケープ
眼下に広がる大自然
弁当
待ちかねたり、の弁当
蝶
蝶も昼休み?

 そうこうしているうちにいつの間にか2時間位が経過していた。太陽は真上にあった。いくつものゆったりとしたカーブを巡りながら仲間川を行く6人。見渡す限りの自然に囲まれて気分はよいのだが、さすがにそろそろ飽きてきた、というか気分転換がしたくなってきた。ところがよくできたもので、ホンゴーさんが、
「そろそろ昼食にしましょう」
と、合図する。待ってました。
 カヌーを岸につけ、そこから森の中に入っていく。細い登り道が木の間をぬっている。昼食のポイントまでちょっとばかり山を登ることになるのだ。5分程進むと今度はやや広めの登山道が現れ、さらにその道を進むと東屋があった。
 いつの間にこんなに高いところまで登っていたのだろう。眼下に仲間川がゆったりとあり、それを包みこむかのように西表のジャングルが眼の前いっぱいに広がっている。ガツンと晴れ上がった青、きらきら光る碧、その境の水平線にはパナリ島がある。なんという景色だろう。それは見る者を圧倒する自然のパノラマだった。

 1時間の休憩時間である。弁当を食べ、あとはのんびりとした時を過ごす。
 が、ここでオレにはひとつやることがあった。それは職場に電話をかけること。別に仕事の確認とかではない。南の島から、大自然の中から、贅沢なバカンスから、職場で働いている同僚に現場の素晴らしさを中継をするのだ。これが西表で絶対やろうと思っていた目標のひとつであった。
 はっきりいって嫌がらせだった。それも、そのために今までのPHSを携帯に変えるくらいの確信犯的作戦だった。
 防水パックから携帯を取り出す。やった、心配していたアンテナもちゃんと立っている。
「もしもし、オレ」
「え? 今どこ?」
「ふっふっふ。今は西表ぇ。川の上にいまーす。いやぁ、自然はいいねぇ、青い空に青い海、気温は35度、まさに夏まっしぐら。で、どう? 仕事忙しいかね」
「このバカチンっ!」
 ちょっと現地の状況を脚色しながらの中継であったが、とりあえず羨ましがらせることには成功したようだ。満足。休み明けがちょっと怖い気もするが。

 さて、今回のパーティーのインストラクターであるホンゴーさん、えらく元気なニーチャンなのだが、休憩時間になり昼飯を食べると思う間もなく、まるでスイッチが切れたかのように眠ってしまうのだった。あまりにもあっという間なので、単に横になっただけなのかと思いきや、どうやら完全に睡眠状態に入っているようだ。
 残された我々はこのまま起きないんじゃないだろか、と顔を見合わせていたのだが、これがおかしくも不思議なことに、1時間きっかり出発時間になると同時に突然再起動、どう考えても今まで熟睡していた者とは思えないテンションで、
「さあ、出発しましょう」と活動しはじめたのだった。
 その突然さ加減、そしてめざましを使った形跡もないのにぴたり目を覚ます正確さ加減、我々はもう一度顔を見合わせるしかなかった。
 ところで、その日の宿と今回お世話になったカヌーハウスはかなり親しい関係にあるのだった。で、宿のおっちゃんがその夜ホンゴーさんの謎について暴露した。
「彼は最近彼女ができたんだよぉ」
 なんたる意味深な。それにしてもまったく悪いことはできないものだということだ。いや、そもそも別に悪いことなど何もないのだが。


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