G式過剰



第14ステージ
『夏の終わりの音楽会』

 ガムランを聴きにいった。

 ガムランを生で聴くのはひさしぶりだ。
 昨年行ったバリ島で毎日ガムラン三昧の生活だったせいか『むわっとする暑さにはガムランの響き』という刷り込みができてしまっている。夏の最後の日曜日のお楽しみには実に相応しいではないか。

 今回の奏者達は『スカル・ジュプン』という日本人によるガムラン演奏グループだ。
 ジャン! と鳴り響く。とたん体中にザワザワとふるえが走る。本気で鳥肌がたった。音によるトリップ感とはこのことだ。
「そうそう、これがガムランだったんだよな」
 普段はCDで、しかもヘッドフォンで聴いている。それは全身で聴くというのと雲泥の差があって当然だ。

 今回の公演ではガボールやレゴンなどの踊りもあったが、個人的には演奏のみの楽曲に強く心を動かされた。金属打楽器の高音の響き、うねるような音のつながり。音楽と言うよりはむしろ自然の音の再現に近いのかもしれない。(単純にいっちゃえばオルタナティブなワールドミュージックってこと? 違う?)

 不思議なことだが、ガムランを聴いているといつも眠くなるのはなぜだろう。いままでどの演奏でも必ず眠くなってしまう。決して退屈だからとか疲れているからとか、そういうわけではない。なのに瞼が重くなっていく。
 どうやらあの音自体に秘密がありそうだ。テンションが高まったまま眠気をもよおすということ、睡眠ではなく催眠なんじゃないか。ガムランやケチャを演じているうちに“とんで”しまう話をよくきくが、それに近いんじゃないか。もちろんそれはとても心地よいものなのだが。

 今回もやはりフーッと眠りの世界に引きずれてった。そのまま半睡眠状態にいってしまえば極楽だったはずだ。しかし、なぜかたまたま最前列ど真ん中のVIP席だったせいで、奏者と目が合っちゃってウトウトしようにも気が引けてできなかった(トホホ)。

(上の話と矛盾してるようだが)今回の目玉は、仮面劇トペンだ。イ・ニョマン・スマンディ氏による独演である。トペンは初めての体験だったのだが、これが実に新鮮だった。というのは、ほかの楽曲舞踏が、『劇をみせる。曲を聴かせる』という奏者と観客という区切りが強いのに対し、もっとお互いの垣根の低い大衆演芸的な要素が強いように感じられたせいだ。もちろん今回の演奏会では会場が会場だけに、比較的スムースに(それでも結構遊んでたが)上演されたのだが、実際にはもっと客いじりをふんだんに盛り込んだ、イロモノとしての要素が強い娯楽なんじゃないかな。あくまでも推測なのだが。

 ともあれ、久しぶりの生ガムラン。うーん、またバリ行きたい熱が高くなってしまった。いったいどうしてくれよう(笑)。

99年09月03日

G式過剰