G式過剰



第17ステージ
『マッパGO!GO!GO!』

 題でいきなりオチてしまっているが、これはノンフィクションである。

 親しい友人から、ひょんなことから衝撃(?)の私生活についてカミングアウトされたのだった。結論からいうと、彼は家にいるときはなるべく裸で暮らすようにしているのだという。
 以下は彼の独白である。

 裸でいると気持ちいいんだよ、ホント。別に変な性癖とかじゃなくてさ、もう純粋な気持ちでの裸生活。確かにはたから見ればヘンだろうなって重々承知の上だけどさ。でもそれ以上に得るものがあるんだ。人生観変わるといっても過言じゃないね、マジで。

 裸で過ごすことのメリットはね。なんたってその開放感ね。なにも身にまとわないことの身軽さ。服を着ていることの圧迫感がないってのが、あれほどまでに気持ちいいってのは、やったことのある人なら絶対わかってもらえるはずだ。
 とにかく別に性倒錯的な嗜好でやってるわけじゃないから、誰かに見てほしいとかそんなんじゃないんだ。見られたら恥ずかしいでしょ。だからもちろん一人でいるときしかそんな格好はしない。
 誰かが突然訪ねてきたらどうするって? 姑息かもしれないけど、玄関に服をおいてる。それにいざとなればシャワーを使うところだったっていえば、別になんの問題もないはず。
 もちろん、それでも見られるかもしれない。でもそんな状況で感じるスリルがいいってのもあるかなぁ。見られちゃったらどうしようっていう感じ。あと、やっちゃいけないことしてるかもっていう感じね。日常からの脱却感ってやつ。うーん、そういう意味では性倒錯なのかなぁ。

 デメリットはね。考えてみれば、室内は空調もきいてるし、そう、特にないね。メリットしかないよ。

 服を着てないってことでいつも思うのは、自分の肉体を実感できてるなってこと。ソファーや絨毯なんかと肌が直に触れるでしょ。そうすると、ここまでが身体でここからが自分じゃないもの。そういう距離感を感じることができる。そのことで自分の範囲というか、自分自身を知ることができる。哲学にも通じるところが絶対あると思うよ。なんて少し言い過ぎかな。

 『生まれたときはみんな裸』ってよくいうでしょ。まあ陳腐ではあるけれど、そのとおりだよね。裸でいることのほうが自然に見えるってのはあると思うんだ。中途半端になにかを身につけてるのってヘンでしょ。例えば裸なのに靴下だけつけてるとか、ネクタイだけつけてるとか。そういう服装に感じるってのは、それこそ本物の性倒錯者だよ。
 なんてね。別に裸生活を正当化する理論武装をする必要なんかないんだよね。 まず脱いでみるべし。それだけで十分。とにかく、一回でもいいから裸で生活することを勧めるよ、ボクは。普段の生活からは得難い貴重な体験ができるし、世界観変わるよ。
 ボクのいえるのはそんなとこだな。

 まったく、きかなければよかった。こんなヤツだとは思ってもいなかっただけにショックである。絶対にどこかおかしい。そう、おかしいというのは確かなのだ。しかし、心のどこかで、一度くらいならやってみようななぁと思っている自分がいるのもまぎれもない真実なのだ。

99年10月17日

G式過剰